日本の凋落を止めるためにできること
2022年06月06日
「円相場は1ドル131円に下落し、20年ぶりの安値を更新」
「ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰」
「小麦価格は4月から17.3%上昇」
昨年あたりから世界的に物価が上昇し、直近の円安でさらに国内の物価高に拍車がかかっている。ガソリンや電気料金、生活用品の価格が上がり、家計は苦しくなるばかり。円安やインフレを早急に解決してほしいと願う声は大きい。
対策として、「円高にするには、日本銀行のマイナス金利政策を撤回して、金利を高くすればいい」という専門家の意見がある。日銀が金融機関から預かる当座預金の金利を上げよというものだ。これは全く正しい。ただし、円安退治だけを目的にした場合だ。
これは本質的な解決になっていない。散らかったキッチンを片付けるために、キッチンのゴミをリビングルームに捨てているだけだからだ。
たしかに、金利を上げれば外国からの資金が流れ込む。円が買われて円高になる。輸入価格は安くなるから、物価高はある程度収まる。キッチン(円安問題)はきれいに片付いた。
ところが、キッチンのゴミはリビングに移動しているだけで、ゴミ自体が片づいたわけではない。日銀が金利を上げると、日本国債の金利も住宅ローンの金利も上がる。国の増税は必至になり、個人の毎月のローン返済額も大変なことになる。もちろん、日本の景気が回復していて金利を上げるならそれは真っ当な判断だ。しかし、実力以上に金利をあげてしまうと、リビングはめちゃくちゃな状態になる。
金利を上げて外国からの資金を呼び込むのは、「日本国内の誰かが支払う高い金利を外国に渡して、日本円を高く買ってもらっている」だけの話だ。500円のキャッシュバックをつけて、1000円の商品を1500円で買ってもらうことに、なんの意味があるだろうか。キッチンもリビングも家の中全てを片付けるには、本質に立ち返って考え直す必要がある。
解決すべき本質的な課題とは、「欲しいモノ(とサービス)が手に入らず、生活が豊かにならない」ことだ。長い間、日銀がインフレを目標に掲げて金融緩和を行なってきたのも、この課題を解決するためだ。
インフレを起こして物価を上げ、デフレスパイラルから脱却すれば、それ以上に賃金が上がる算段だった。ところが現状を見てわかるように、賃金が上がらないまま、物価が高騰している。しかし、この件については日銀を責めてもしょうがない。今回の問題は、金融調節だけで解決できる問題ではないからだ。
欲しいモノが手に入らない原因は二つ、
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