財政健全化は「骨抜き」に、参院選に向けて議論を
2022年06月13日
財源確保の展望も議論ないまま防衛予算をどんどん増やすという乱暴な政策が6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる「骨太の方針」)に盛り込まれた。
「骨太」とは名ばかりの無責任なやり方である。
かりに財源を消費税に求めるとすれば、税率は現行の10%が12%に上がるという大まかな計算も成り立つほどで、他の歳出を削るにしても国民生活への影響は甚大だ。
政府与党はもちろんのこと、野党もメディアも、この問題を参院選の重要な争点とする決意で財源論など議題設定を競ってもらいたい。まともな議論もできないままの参院選なら、もはや国民を愚弄する茶番劇でしかなくなる。
岸田政権では初の「骨太の方針」は、予算編成など今後の経済財政運営の指針となる文書だが、防衛力強化については「新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」との表現が自民党との文言調整の過程で盛り込まれた。
さらに、「NATO(北大西洋条約機構)諸国においては、国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと防衛力強化について改めて合意がなされた」との文言も本文に書き込まれた。
それに関する脚注では、「NATO諸国の中でG7メンバーでもあるドイツは、国防予算を対GDP比2%とすることを表明し、そのために憲法に相当する基本法を改正し、新規借入によって1000億ユーロの特別基金を設立」と、あたかもドイツの防衛予算増が日本のお手本であるかのような書きぶりになっている。
こうなった背景には、政府が示した原案への注文が自民党の政務調査会で噴出し、同会の全体会議を3回も開いてようやく了承されるという異例の経過があった。
自民党は昨年の総選挙の公約でも防衛費増額について「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指します」との表現を盛り込んでいた。それを年末の予算編成に向けて具体化しようとしたのが今回の動きだ。ロシアによるウクライナ侵略で人々の関心が安全保障に向けられるようになり、防衛予算増は世論に受け入れられやすいとみたのだろう。
しかし、ここには大きな問題がある。
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