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アマゾンで労働組合結成の衝撃波

米アップルにも労組誕生 スタバは株主より従業員重視へ

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 6月13日、神奈川県横須賀市でアマゾンの荷物を配達するドライバー10人が労働組合を結成した。10人は個人事業主(フリーランス)で、アマゾンが委託した運送会社と業務委託契約を結んで働いている。ドライバーによる職場単位での労組結成は初めてだ。

アマゾン日本労組拡大アマゾンジャパンが入るビルの前で横断幕を持つ労働組合関係者=6月13日、東京都目黒区

経営効率や利便性至上主義への異議申立て

 会見によると、1日に配る荷物量はネット通販の普及やコロナの巣ごもり需要で以前の2倍の約200個に増加。1日12時間という長時間労働が常態化しているという。

 一方、配達料は日当制(1万8千円)で2年前から変わらず、ガソリン代や車の維持費は自己負担だ。配達先や労働時間はアマゾンのAI(人工知能)やスマホのアプリで効率よく管理される。

アマゾン拡大アマゾンの通販サイト。人目を引くイベントや広告戦略で大きなシェアを握る

 労組は「業務委託は偽装であり、実態は雇用された労働者と同じ」と主張。アマゾンに対して労働契約の締結や長時間労働の是正を求めている。結局、ネット通販の便利さは、配達員の過重労働の上に成り立っている。

 この国で働くフリーランスは462万人いる。昨今は食事宅配サービス、各種インストラクターなどが、権利保護を求めて労組を結成する動きが広がっている。

 こうした動きは、現場で働く人の実情をよく考慮せず、経営効率や利便性だけを最大価値として追求する企業社会への異議申し立てでもある。

4月には米アマゾンで初の労組結成

 新たに労組を作る動きは米国でも活発だ。今年4月1日には、ニューヨーク市のスタテン島にあるアマゾン物流倉庫で労働組合(ALU)が結成された。

 リーダーは元従業員のクリスチャン・スモールズ氏。「倉庫ではコロナ下なのにソーシャル・ディスタンスを取るスペースがない。安全対策を取ってほしい」と会社に要求したら、その日に解雇され、彼は労組結成を決意した。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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