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国債1千兆円でも大丈夫なのか(上) 「誰に働いてもらうか」を補助線にして考える

問題を解決するのは「お金自体」ではない

田内学 お金の向こう研究所代表

 「私は大丈夫だと言いたい」
 6月4日、京都市内で講演した安倍晋三元首相は、1千兆円を超える国債発行残高を不安視する意見に対して、このように語った。

拡大朝日新聞デジタルの記事から。2022年6月4日20時30分配信
安倍元首相、1千兆円の借金「大丈夫」

 将来世代にそんなにツケを回していいのか。そう思う人は少なくないだろう。

 GDPの2倍を遥かに超えて、さらに増え続ける日本の債務残高。しかし、この財政問題については、さまざまな意見を耳にする。

 「日銀と政府を一体で考えれば心配はいらない」と諭す元首相がいれば、
 「このままだと日本はハイパーインフレになる」と叫ぶ経済評論家がいる。
 「日本は通貨発行権を持っているから大丈夫だ」と説明する国会議員がいれば、
 「バラマキを続けるとローマ帝国のように滅ぶ」と警告する財務官僚がいる。

 通貨の信認、国債の格付け、国家のバランスシート、現代貨幣理論、マンデルフレミング、ドーマー条件。それぞれの主張を聞けば聞くほど、話が複雑に専門的になって、どの話を信じていいのか分からなくなる。真実は一つであるはずなのに、ここまで現状認識がバラバラなのも珍しい。

拡大財務省HP「日本の財政を考える 日本の借金を諸外国と比べると 4.日本の借金の状況」から
主な国の債務残高(対GDP比)

 ところが、ここに一本の補助線を引くと、バラバラに見えていた意見が一つにつながる。そして全体像が見えてくる。

 補助線とは、「誰に働いてもらうのか」という視点の導入だ。

 そんな基本的なことで財政問題が理解できるのか、禅問答でも始める気なのか、そう思われる方もしばらくお付き合い願いたい。

 長年、ゴールドマンサックス証券で、トレーダーとして金利マーケットで日本国債と向き合い、さまざまな分析をしてきたが、日本の財政問題の本質はそんな基本的なところに存在していたのだ。

 まずは人とお金と社会の関係を考え直すことから始めてみたい。

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筆者

田内学

田内学(たうち・まなぶ) お金の向こう研究所代表

1978年生まれ。東京大学入学後プログラミングにはまり、国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。 同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。 2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日銀による金利指標改革にも携わる。 2019年退職。現在は金融教育や政策提言などの活動を行なっている 著書に『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)、『高等学校教科書 公共』(教育図書、共著)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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