物価高は小手先の選挙対策では止まらない
金利引上げを拒否し続ける黒田日銀、9年間の功罪を検証する
木代泰之 経済・科学ジャーナリスト
7月10日投票の参院選は、物価高とその対策が争点になっている。1ドル=135円の円安がエネルギーや食糧など輸入物資の高騰に拍車をかけており、日本銀行が固守する金融緩和の是非が問われる選挙でもある。
金利引上げを拒否する黒田日銀総裁
円安に確実に歯止めをかけるには、日銀自身が金融緩和を見直して金利上昇を容認すればよい。例えば、長期金利は現在0.25%を上限にして日銀が強圧的に抑え込んでいるが、これを少しずつ市場の実勢に任せていく。さらに政策金利を柔軟に引き上げる。

黒田総裁の任期中に国債残高は約300兆円増加した=橙色の部分
今年の日米金利差と円相場の動きはきれいに連動している=上のグラフ。これで日本の金利が上昇すれば、日米金利差が縮小して為替は円高に向かい、インフレ圧力は弱まる。この案は多くのエコノミストが提案している。
しかし、黒田東彦日本銀行総裁は金融緩和の継続を主張する。「今の物価高は目指して来たものとは違うからだ」と説明するが、金融緩和の見直しはアベノミクス否定であり、自己の否定にもつながるからではないだろうか。
アベノミクスは財政の悪化=下のグラフ=や日銀の財務劣化という深刻な歪みをもたらした。もし金利が上昇すれば、後述するように、財政は一段と苦しくなり、国債を大量に保有する日銀も信認が揺らぐ事態になりかねない。
このため日銀は自縄自縛となって身動きが取れないのである。
「2年間で2%の物価上昇を実現する」と宣言した黒田総裁
なぜこうなったのかを知るには、黒田総裁の9年間の歩みを正しく検証しなくてはならない。
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