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不況に向かう世界、感染爆発する日本、岸田政権はなぜ「無策」なのか

語るのは楽観的な見通し、求めるのは国民の自助

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界でも感染者が少ない方だと言っていたはずなのに、ふと気が付けば、世界最多の新規感染者を数える日々である。それでも岸田文雄首相はコロナ感染抑制に有効な手を打たず、日本経済の先行きについても楽観的な見通しを述べている。世界経済も失速のさなかだというのに、なんとも呑気な話である。この政権に危機を克服する能力があるのか、不安はつのるばかりだ。

成長率を下方修正、不況の色増す世界経済

 国際通貨基金(IMF)が7月26日に発表した世界経済見通しによると、2022年の世界経済の成長率は前回(4月発表)の見通しよりも0.4ポイント下方修正され、前年比3.2%となった。

米ワシントンの国際通貨基金(IMF)本部
 ロシアによるウクライナ侵略とそれに対する経済制裁、エネルギー・食糧価格の高騰などのため各国の経済は大きな打撃をこうむっている。しかも長い間世界経済を引っ張って来た米国と中国が経済停滞に陥った様子も明らかになって来た。

 22年の成長率は米国が1.4ポイント低い2.3%に引き下げられ、中国は1.1ポイントの下方修正で3.3%。日本は同0.7ポイント減の1.7%となった。

 IMF世界経済見通しの下方修正は今年1月、4月に続いて3度目だが、それでもなお甘すぎる。

 例えば米国はすでに不況と呼ぶべき局面に入っている。米商務省が7月28日に発表した2022年4-6月期の実質国内総生産(GDP)の速報値は、年率換算で前期比0.9%減。1-3月期(1.6%減)に続いて2四半期連続であり、これによってマイナス成長が明らかになった。インフレ抑制のために米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを繰り返し、住宅投資などの急減で景気全体が冷え込みつつある。

 中国経済の落ち込みも深刻で、7月15日に中国が発表した4―6月期の実質成長率は前年同期比0.4%だった。前期(1―3月期)の4.8%から大幅に減速。1992年以降で2番目の低さだった。しかも4―6月期は前期比ではマイナス2.6%という落ち込み。コロナ感染と対策が主因だ。中国と米国から世界不況がひどくなる可能性は十分にある。

Blue Planet Studio/shutterstock.com

感染爆発、経済失速でも、岸田首相は楽観発言

 7月25日の経済財政諮問会議で、政府はこれまで実質成長率3.2%としていた2022年度の経済見通しを下方修正し、実質2.0%に改めた。

 その最大の理由は、ロシアのウクライナ侵略などで打撃を受けた世界経済の落ち込みである。今後、米国の不況が鮮明になり、欧州や中国などの景気後退も響いてくる。さらにコロナ感染第7波の急拡大を考えれば、消費も生産も打撃をこうむり、日本がマイナス成長に陥る可能性も否定できない。

 ところが、岸田首相はこの日の諮問会議で、経済の先行きと感染対策に関して、次のように楽観的な見通しを述べた。

 「日本経済は、オミクロン株の特性を踏まえた感染防止と経済社会活動の両立により、コロナ禍で落ち込んだサービス消費にもようやく明るい兆しが出始め、2022年度の実質GDP(国内総生産)は、2.0%程度の成長となる見込みです。これまでの経験をいかし、医療提供体制の強化等に万全を期すことにより、できる限りウィズコロナの下でも、経済活動の水準を引き上げてまいります」(首相官邸ホームページ

o経済財政諮問会議で発言する岸田文雄首相=2022年7月25日、首相官邸

 首相はさらに「今年度から来年度にかけて成長力をさらに高め、一段高い成長経路に日本経済を乗せてまいります」と締めくくった。

 だが、7月23日には新型コロナの新規感染者数が東京で3万人台、全国で初めて20万人台に乗せ、過去最多を記録した。自宅などで療養中の感染者は100万人を超えた。しかも、米ジョンズホプキンス大学の調査では22日に世界の新規感染者は110万余人で、うち日本が19万人余りであることも23日朝刊で報じられていた。

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