小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
語るのは楽観的な見通し、求めるのは国民の自助
7月25日の経済財政諮問会議で、政府はこれまで実質成長率3.2%としていた2022年度の経済見通しを下方修正し、実質2.0%に改めた。
その最大の理由は、ロシアのウクライナ侵略などで打撃を受けた世界経済の落ち込みである。今後、米国の不況が鮮明になり、欧州や中国などの景気後退も響いてくる。さらにコロナ感染第7波の急拡大を考えれば、消費も生産も打撃をこうむり、日本がマイナス成長に陥る可能性も否定できない。
ところが、岸田首相はこの日の諮問会議で、経済の先行きと感染対策に関して、次のように楽観的な見通しを述べた。
「日本経済は、オミクロン株の特性を踏まえた感染防止と経済社会活動の両立により、コロナ禍で落ち込んだサービス消費にもようやく明るい兆しが出始め、2022年度の実質GDP(国内総生産)は、2.0%程度の成長となる見込みです。これまでの経験をいかし、医療提供体制の強化等に万全を期すことにより、できる限りウィズコロナの下でも、経済活動の水準を引き上げてまいります」(首相官邸ホームページ)
首相はさらに「今年度から来年度にかけて成長力をさらに高め、一段高い成長経路に日本経済を乗せてまいります」と締めくくった。
だが、7月23日には新型コロナの新規感染者数が東京で3万人台、全国で初めて20万人台に乗せ、過去最多を記録した。自宅などで療養中の感染者は100万人を超えた。しかも、米ジョンズホプキンス大学の調査では22日に世界の新規感染者は110万余人で、うち日本が19万人余りであることも23日朝刊で報じられていた。
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