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赤字ローカル線廃止の議論に根本的に欠けていること

人口希薄地域の公共交通は鉄道でなくてはならないのか

福井義高 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

 筆者は前稿を、「都市間及び都市圏の旅客輸送という鉄道特性を発揮し得る分野の基幹的交通機関として再生することを目指したのが国鉄改革であり、分割はその手段であって、目的ではない。1987年の旅客会社地域分割ですべて終わったわけではないのだ。鉄道としての特性を発揮できないローカル線と実質的には大赤字の貨物輸送の抜本的解決は先送りされたままである。30年以上経った今も、国鉄改革は未完である」と結んだ。(2022年07月14日付「分割民営化の陰で忘れられた国鉄最後の独自改革案」)

根室線拡大S字カーブ(根室線下金山-金山間)=北海道南富良野町 2022年6月18日

JRローカル線廃止の議論は動き始めたが…

 これまで順調な経営を続けてきた本州3社もコロナ禍で輸送量が激減し、ローカル線問題に本腰を入れて取り組み始めた。本州3社のなかで最も収益性の低いJR西日本は先頭を切って、2022年4月11日「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」と題して、全路線網の3割に相当する閑散線区1360キロの収支を公表し、「線区によっては地域のお役に立てておらず、厳しいご利用状況となっています。特に今回お示ししている線区については、大量輸送という観点で鉄道の特性が十分に発揮できていないと考えており…….鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたいと考えています」とした。2019年度の当該全路線の平均輸送密度は1日1キロ当たり651人でしかない。JR東日本も同様の認識に基づき、やはり全路線網の3割に相当する閑散路線2218キロの収支データを7月28日に公表した。こちらの同年度平均輸送密度も709人で、JR西日本と同様の状況である。

 こうしたなか、国交省は「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」(以下、「検討会」)を立ち上げ、7月25日に「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」(以下、「提言」)を公表した。

 しかし、この「提言」は、現状認識においても国鉄ローカル線対策の経緯の理解においても問題が多く、政治的圧力により本来の主張を貫けなかったのかもしれないけれど、今後の地域交通の再編を阻害しかねない内容となっている。

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筆者

福井義高

福井義高(ふくい・よしたか) 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。1962年生まれ、東京大学法学部卒、カーネギー・メロン大学Ph.D.、CFA。85年日本国有鉄道に入り、87年に分割民営化に伴いJR東日本に移る。その後、東北大学大学院経済学研究科助教授、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科助教授をへて、2008年から現職。専門は会計制度・情報の経済分析。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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