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ロシアへの経済制裁は、体制エリートや富裕層を狙い撃ちすべきだ

超富裕層の租税回避穴を防ぎ、グローバルに公正な税制を確立せよ

山内康一 前衆議院議員

 驚いたことに2022年8月10日発足の第二次岸田内閣でも「ロシア経済分野協力担当大臣」が置かれました。しかし、「経済分野協力担当」というよりも「経済制裁担当」の大臣が必要だと思います。ロシアのウクライナ侵略にあたり日本はウクライナへの軍事援助を行うべきではありませんが、せめて経済制裁で影響力を行使すべきです。岸田内閣もロシア経済制裁に強くコミットすべきです。その参考になるのが、経済学者のトマ・ピケティ氏の提案です。

 そろそろ新しいタイプの制裁を考案すべきときが来ている。問題になっている国家体制の恩恵を受けて裕福になったオリガルヒ(国有企業を民営化する過程で生まれたロシアの新興財閥)に対して制裁を集中的に課すべきなのだ。

 合理的な名案です。ポイントは「ロシア国民全体ではなく、富裕層にターゲットを絞った経済制裁」という点です。

トマ・ピケティ氏拡大トマ・ピケティ氏

 経済制裁が体制転覆につながった例は意外と少ないです。北朝鮮の独裁体制はきびしい経済制裁でも続いています。イギリスの外交官のロバート・クーパー氏は次のようにいいます。

 経済制裁は、対象国に行動を改めさせる誘因にもなるし、制裁解除は交渉における有効なカードに最終的にはなるだろう。しかし、経済制裁の痛手をより厳しく受けるのは、常に保身に怠りない指導者より、民衆である。あらゆる努力を講じたものの、イラクではそうしたことが起きてしまった。

 逆説的ではあるが、経済制裁がもっとも効果を発揮するのは、経済制裁を課す必要がまったくない国、つまり、民主主義国家を相手にしたときなのだ。なぜなら、民主主義国の民衆は、経済制裁で損害を受けたら、次の選挙で政府に報復するだろうから。

 ところが、経済制裁が逆効果となり、その国の政府をかえって強くすることもあるのだ。元々は人気のなかった政府であっても、外部から圧力がかかったことをきっかけに、周囲に一致団結する雰囲気が生まれることがよくある。セルビアへの経済制裁の場合、この国の政府に経済破綻への責任を回避する口実を与えてしまった。いや、セルビア政府は、利益すら得ていたかもしれない。経済制裁の結果、導入された配給制度の操作を通じて、セルビア政府に権力が集中することになったからだ。ミロシェビッチ率いる政府のごとき半ば犯罪組織のような政府は、暗黒社会と深いつながりを持っているため、密輸や非合法活動が活発な環境の中で栄えるのである。

 クーパー氏の指摘する「経済制裁が、制裁された国の体制を強化する」という逆説が実際にあります。北朝鮮もそうでしょう。ロシアもそうなりかねません。プーチン体制は今のところ動揺している気配がありません。ロシアの庶民の多くは経済制裁で苦しみ、アメリカへの恨みを深めていることでしょう。

 また経済制裁で密輸などが横行すると、禁酒法時代のアメリカのようにマフィアが勢力を拡大し、犯罪者が増えて庶民は困るという事態を招きかねません。プーチン周辺のマフィアに限りなく近い政商や軍・治安機関・情報機関関係者は、経済制裁による地下経済拡大で利益を得る可能性さえあります。

 ロシアの国民のかなりの割合は、内心はウクライナ侵攻を望んでいないと思います。特に戦場に送られる兵士やその家族は、大義のある祖国防衛戦争ならまだしも、大義なき侵略戦争で犬死することは望まないでしょう。しかし、

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筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 前衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所「教育と国際開発」修士課程修了。政策研究大学院大学「政策研究」博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(4期)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。現在、非営利独立の政策シンクタンクの創設を準備中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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