組織ぐるみのデータ改ざん・隠ぺいなど不正の温床にも
2022年09月12日
NTTグループは8月、脱年功序列の新しい人事制度を発表した。入社年次や在任期間にかかわらず、評価基準を満たせば20代でも課長級への昇進が可能になる。
NTTは日本電信電話公社を前身とし、人事制度は年功色が強い。評価基準は勤続年数が基本で、1等級上がるには最低2~3年の在任期間を必要とし、若手を抜てきすることが難しかった。
グループ全体の従業員数11万5000人というNTT。その方針転換は、戦後日本で当たり前だった年功制やメンバーシップ型雇用が崩れる前触れと言えそうだ。
いま産業界では、他にも優秀な人材を確保しようと脱年功・若手登用に踏み切る企業が現れている。最近では住友商事、三井物産、リコー、テルモなどが一例だ。
日本の将来人口の推移を示す上のグラフが、年功制の問題点を示している。
総人口は現在約1億2480万人だが、少子化により2030年には1億1900万人に、55年には9700万人に減少する。中でも経済活動の中核を担う15~64歳の生産年齢人口(灰色)の先細りが目立つ。
例えば2030年の生産年齢人口は6875万人(今より約500万人減)で、年齢層別では50歳以上が40%を占め、40歳代20%、30歳代18%、20歳代16%と若いほど少なくなる。企業の年齢構成もほぼこれに合わせて上下逆のピラミッド型になる。
今も多くの企業が採用している年功制は、若年層の賃金を低めに抑え、勤続年数や経験が増えるにつれて賃金を引き上げていく。それが将来の人生計画を立てやすくさせ、勤労の忠誠心やモチベーションを高めてきた。
だが、年功制は一定規模の若年層がいてこそ成り立つ制度である。これから若年層が急減し中高年が増えると、年功制の維持は難しくなる。
若年層やスキルのある人材にとって、中高年が上を抑える年功制は、「自分の技量に見合った給与やポストが得られない」という不満の原因になる。忠誠心は薄れ、離職率が高まるだろう。
企業は否応なく年功制の根本的見直しを迫られる。人口減少は日本社会が経験したことのない大波だ。逆ピラミッドが明確になる2030年あたりが大転換期になる。
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