メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

円安から反転する兆しが見えてきた

陰り始めた米経済と順調な日本経済の回復が金融政策転換の可能性を示唆する

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 アメリカの金融引き締め、日本の継続的金融緩和を背景にドル高・円安が進んでいる。昨年9月には1ドル110円を切っていたドル円レート(2021年9月1ドル109.98円)はその後、急速に円安に傾き、今年9月13日には1ドル142.53円になってきている。1ドル140円を超えるレートは1987年以来の事で、その後のレートは円高に推移し、2011年には1ドル80円を切ってきたのだった。ちなみに、2011年の年間平均レートは1ドル79.81円。しかし、その後は円安に転じ、前述したように、9月13日には1ドル140円を上回ってきている。

掲示板拡大1ドル=144円台の為替相場を表示する電光掲示板=2022年9月14日、東京都中央区

日銀総裁は「金融緩和の修正考えず」と言明

 ドル高、円安の原因はアメリカと日本の金融政策の違いによる。アメリカは昂進するインフレ(2022年7月には一時9%を超えた)対策として、金融引き締めを実施。他方、日本銀行は景気回復を確実にするために金融緩和策を続けている。日本銀行は去る6月17日に開催した金融政策決定会合で金融緩和策の維持を決定、黒田東彦日本銀行総裁は「現時点では金融緩和の修正考えず」と明言している。

 ただ、現在の急激な円安については「先行きの不確実を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり望ましくないと考えている」として、金融・為替市場の動向や経済物価への影響を十分注視する必要があると述べている。また、欧米のように金融を引き締めるべきではないかとの質問に対しては、「今金融を引き締めると、更に景気の下押し圧力になり、日本経済がコロナ禍から回復しつつあるのを否定して、経済が更に悪くなってしまう」と述べ、緩和策の見直しは適切ではないという認識を示した。

 黒田日銀総裁の任期は2023年4月8日まで。少なくとも、在任中は金融緩和策を続けると考えられている。黒田総裁は2013年の4月に就任以来、「異次元金融緩和」と呼ばれた積極的金融緩和策を続けてきた。景気回復途上にある日本経済を後押しし、回復を確実なものにするために金融緩和を継続してきたのだ。この積極的金融緩和策は成功したと言っていいのだろう。年平均1%前後だった日本経済の成長率は、2020年にコロナ禍でマイナス4.50%まで落ち込んだものの、2022年には2.39%まで回復(国際通貨基金=IMF=推計2022年4月)すると見込まれている。

マイナスに落ち込んだ米の成長率

 しかしながら、実際には日米の金融政策の差を背景に1ドル140円を超えるに至ってしまったのである。問題はこのドル高・円安がどこまで進み、いつ反転するかであろう。

・・・ログインして読む
(残り:約1212文字/本文:約2298文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

榊原英資の記事

もっと見る