ずさんな運営を会計検査院が再三指摘、それでも懲りない農水省と族議員
2022年09月27日
環太平洋パートナーシップ(TPP)の農業対策としてつくられた畜産基金の運営のずさんさが9月14日会計検査院によって指摘された。TPP農業対策として2015~20年度に1兆9404億円の予算措置が講じられたが、このうち5319億円が基金に充てられた。指摘されたのは、農林水産省所管の公益社団法人「中央畜産会」に積まれた農業機械リース費用に対する補助事業の基金である。中央畜産会の事務処理に例えば19年度では14カ月もかかったため、農家に農業機械が届けられるのがさらに遅れ、農家による補助金辞退が相次いだ。それなのに、農林水産省は、基金に支出を上回る金額を積み増し続けたため、初年度は659億円の基金が20年度末には1,007億円に膨らんだ。会計検査院は、このうち123億円が過大だと指摘した。
本来、国の事業は単年度であり、基金を積んで対応することは珍しい。というより、原則的には禁止される。TPP対策では、関税の削減期間が長期に及ぶというので、基金を積んで対応するとされた。しかし、TPP対策以前から、畜産関係で基金が作られるのは珍しくない。これまで農畜産業振興機構(ALIC)によって多数の基金がつくられてきた。
また、会計検査院によって不適切な運営が指摘されるのも、今回が初めてではない。2010年度と2012年度の2回にわたり、会計検査院によって、その無駄遣いを指摘されているのだ。
表面的には、基金を作る目的は、年度間で事業量の変動が激しいので、とりあえず一定の額を積み上げて、事業量が少ない時は余った金を積み立てておき、事業量が多い時のために対応しようというものだった。しかし、ALIC自身に国からの交付金をプールしておく基金の役割を果たす勘定が存在している。会計検査院の指摘によれば、これは支出額の3倍以上の資金額となっていた。これ自体、事業量が少ないのに、長期間にわたり多額の資金を保有していることになる。つまり、必要のない金がALICの基金にたまっているということである。
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