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急伸長するアプリBeRealは「SNS疲れ」の救世主となるか

「映え」から「リアル」へ 変化するソーシャルメディア

小林啓倫 経営コンサルタント

 いまから5年前、2017年のユーキャン新語・流行語大賞において年間大賞に選ばれたのが、「インスタ映え」(画像共有SNSであるInstagram上で高評価を得る写真、またそうした高評価を得られるようにさまざまな工夫を行う行為)だった。この言葉に象徴されるように、人々はソーシャルメディア上において、自らを「他人からこう見られたい」という姿に近づけて見せようとすることが多い。

 もちろん各社から提供されるSNSにはそれぞれ特徴があり、たとえば日本のTwitter上では、むしろ自虐的な投稿が歓迎されるという意見もある。しかしそれも、他人からの支持や共感を集めるために話を盛る、すなわち現実を加工するという点では「インスタ映え」に通じるものがあると言えるだろう。

 ところがいま、この傾向に真っ向から反するSNSが人々の支持を集めつつある。そのSNSとは「BeReal」、すなわち「リアルになろう」という名前を付けられたサービスだ。

「リアル」な自分を見せることを強いるBeReal

 BeRealは2020年に立ち上げられた、フランス発のソーシャルメディア・アプリである。ソーシャルメディアというからには、他のユーザーと画像などを通じたコミュニケーションができるわけだが、その仕組みが一風変わっている。簡単に言えば、「自分をよりよく見せる」ことができないようになっているのだ。

拡大App Storeでのプレビュー

 まずBeRealでは、好きな時間に投稿することができない。1日に1回、ランダムな時間に、投稿を行うようアプリから通知される(それがいつ行われるのか事前に知ることもできない)。投稿が行えるのは通知が行われてから2分間。ユーザーはこの2分の間に投稿するかどうかを決め、アプリを開かなければならない。

 投稿される内容も変わっている。ユーザーはスマホに内蔵されたカメラで撮影を行い、それを投稿するのだが、その際にはスマホの前面と背面両方のカメラが起動される。つまり撮影しようとしているものと、撮影しているユーザー両方が撮影され、投稿されるのだ。

 ちなみに前述の2分間という制限には、投稿を作成する時間も含まれている。そのため良く写真を使おうとして何度も撮り直しをしていると、タイムリミットに達してしまう。したがって慌てて髪を整えたり化粧をしたり、カメラの角度を調節したりする余裕は無いため、この点でも「リアル」な自分が出てしまうことになる。

BeRealの紹介動画

 さらに画像や動画を共有するタイプのSNSではお馴染みの、いわゆる「フィルター」(撮影した画像や動画を簡単に修正し、見栄えを良くすることができる機能)は用意されていない。こうした一連の仕組み、より正確に言えば「制約」があるために、ユーザーは他のSNSでは当たり前のように行われている、「自分をよりよく見せる」行為ができないのである。

 もちろん投稿は強制ではなく、タイミングが悪かったり、「こんな部屋や素顔は見せられない!」と思ったりしたら、そのまま通知を無視することができる。しかし自分が投稿を行うまで、BeReal上の友達の投稿を見ることはできず、さらに投稿された内容は1日経つと消えてしまう。友達とコミュニケーションしたければ、自分が散らかし放題の部屋にいようが、寝起きで髪がぼさぼさの状態であろうが、通知が来たタイミングで周囲と自分を撮影して投稿しなければならない。まさに自分の「リアル」や「日常」を晒していかなければならないSNSというわけだ。

拡大BeRealの紹介動画
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筆者

小林啓倫

小林啓倫(こばやし・あきひと) 経営コンサルタント

1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『今こそ読みたいマクルーハン』(マイナビ出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(トーマス・H・ダベンポート著、日経BP)など多数。また国内外にて、最先端技術の動向およびビジネス活用に関するセミナーを手がけている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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