30年以上も収益にゲタをはかせてきた「回避可能経費」のからくりとは
2022年10月14日
鉄道150年の歴史で、国鉄分割民営化は最も大きな出来事のひとつであった。しかし、国鉄の長年の重荷であり、国鉄再建の大きなテーマであったローカル線と貨物輸送の問題はともに、JR体制となって30年以上経った今も、解決が先送りされたままとなっている。前稿(論座2022年08月24日付「赤字ローカル線廃止の議論に根本的に欠けていること」)でローカル線問題を検討したのに続き、本稿ではもうひとつの未解決課題である鉄道貨物の問題を取り上げる。
最初に本稿の主張を要約しておけば、JR旅客利用者の負担で実質大赤字の鉄道貨物を維持し、経済価値マイナスのJR貨物上場を計画する国交省の鉄道貨物政策は、国民経済の観点から全く正当化できないということである。なお、データは原則として公開されたものを用い、入手できないものは筆者が推計した。
旅客輸送に関しては、事業として採算が合わなくても、他の手段を用いた場合よりも鉄道サービスを維持する方が国民経済全体からみて効率的な場合は、税金投入が正当化し得る。国鉄は1日あたり輸送密度4千人を超えれば、鉄道輸送の経済合理性があるとして、採算が取れなくてもローカル線を維持するとしていた。一部に誤解があるけれども、国鉄は儲からないからローカル線を廃止しようとしたのではない。
一方、本来ビジネスベースで行われるべき貨物輸送には、こうしたいわゆる公共性の議論は成り立たない。もちろん、利用者が支払ってもよいと思う価格でサービスが提供でき、採算が取れるのであれば、貨物輸送という機能を担うひとつの手段として、鉄道は今後も生き残ることができるだろう。
しかし、日本の貨物輸送市場には、鉄道がその大量定型輸送という特性を発揮できる領域がほとんど残っていない。
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