メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

世界的インフレの中で日本の現在地は?

カネ余り解消に躍起の欧米 日本もやがて金利政策転換か

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 2022年8月、アメリカのインフレーションは8.3%(前年同月比)、ユーロ圏のそれは9.1%に達している。日本は3.0%(前年同月比)、中国は2.5%と欧米に比べて低いものの、かつてに比べて大きく上昇してきている。2010年から2019年の10年間の日本のインフレ率は年平均で0.465%とデフレ状況から脱却はしたもののかなり低いものだった。それが2022年8月には、前述したとおり3.0%まで上昇している。

先進国で際立つインフレ

 今回のインフレーションの特徴は、先進国での上昇が際立っている点だ。アメリカ、イギリス、ユーロ圏等の上昇率はブラジル、メキシコ、南アフリカといった主要な新興国より高くなっているのだ。この大幅な物価上昇は、ロシアのウクライナ侵攻と西側諸国の経済制裁等によって、食糧、エネルギー価格が上昇し、また、サプライチーンの機能低下が長引くといった供給制約が主因なのだ。加えて、コロナ禍から経済が回復に向かう過程で多くの国・地域でサービス需要が再度拡大したことも影響していると考えられる。

岸田視察拡大精肉店を視察し物価高の影響を尋ねる岸田文雄首相=2022年10月、東京都品川区、代表撮影

 欧米に比べると低いとはいえ、日本のインフレーションも加速している。自給率が低いため、インフレを輸入している側面があるほか、進行する円安がそれに拍車をかけているのだ。

・・・ログインして読む
(残り:約1579文字/本文:約2119文字)


筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

榊原英資の記事

もっと見る