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有事に鉄道貨物輸送は必要なのか

JR北海道を例に戦時・災害時の鉄道輸送の有効性を検証する

福井義高 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

 鉄道貨物は国鉄改革時、旅客と異なり経済合理性を追求することが存続条件とされたにもかかわらず、JR貨物は毎年、少なくとも数百億円規模の赤字を出しながら、上場旅客4社(特に本州3社)に不透明なかたちで支援を受けることで命脈を保っている(2022年10月14日付拙稿「JR貨物の知られざる『不都合な真実』」)。「客貨分離後においても貨物会社は、旅客会社に迷惑をかけない範囲内で、その余席を活用することにより工夫して事業を行う」(1985年6月19日国鉄再建監理委員会懇談会資料「貨物部門 の取扱いについて」) という基本方針のもとに発足したのに、今日では、鉄道貨物存続が自己目的化し、旅客鉄道の特性が発揮できない極端に利用者が少ないローカル線の廃止を阻害する要因ともなっている(2022年08月24日付拙稿「赤字ローカル線廃止の議論に根本的に欠けていること」)。

「安保の観点からも線路維持が必要」と言うが

 国交省の検討会は、「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」で、旅客利用者が極端に少なくても、「災害時や有事において貨物列車が走行する蓋然性が高い線区」は廃止対象としないことが適当と一切具体的証拠を示さず主張する。

道南を走る拡大本州と北海道を結ぶ道南地方を走る貨物列車=2022年7月、北海道北斗市

 具体例として、北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線の存廃をめぐり、小樽・長万部間はすでにバス転換が決まったのに対し、函館・長万部間は、地元が鉄道存続に消極的であるにもかかわらず、廃線にすると貨物輸送が分断されるため、国が「待った」をかけた状態となっているのだ。

 こうした現状を伝える読売新聞記事は、「大量輸送に適する鉄道は、人口が減った地域でも、貨物や軍需物資を運ぶという役割がある」とする。また、2022年5月19日、国交省の会議で防衛省運用政策課長は、「有事の際に北海道の陸上部隊から戦車や弾薬を前線に輸送する手段として貨物鉄道の必要性を強調し」、5月12日の自民党整備新幹線等鉄道調査会で北海道選出議員が、函館線を念頭に「安全保障の観点からも線路を維持していく必要がある」と発言したことを伝え、「鉄道と戦争は密接に関連してきた」として、「鉄道の議論が旅客に集まるのは、平和な時代の証拠ともいえる」と結んでいる(2022年10月15日付朝刊)。

 以下、北海道にとって鉄道貨物はなくてもたいして困らない、物流における「おまけ」であること、有事に鉄道が必要などという主張は今日では根拠がないことを示したい。

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筆者

福井義高

福井義高(ふくい・よしたか) 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。1962年生まれ、東京大学法学部卒、カーネギー・メロン大学Ph.D.、CFA。85年日本国有鉄道に入り、87年に分割民営化に伴いJR東日本に移る。その後、東北大学大学院経済学研究科助教授、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科助教授をへて、2008年から現職。専門は会計制度・情報の経済分析。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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