“黄金バランス”は「炭水化物6:タンパク質2:脂肪2」
2022年11月14日
私は20代の頃、長きにわたって「摂食障害」だった。
「掘るほどに出てくるお米の魅力、まずは思いつくままに」で書いた通り、一切の食材や調味料を拒否しながらも、お米だけは安心感があって食べることができるという期間もあった。
今ではいろいろなものが食べられるようになって外食も飲酒も楽しめるようになった。そんな私に友人・知人・見知らぬ方から時折相談やメッセージが寄せられる。
「本当はお腹いっぱいごはんを食べたい」と言いながらも、お米を食べると太るのではないかという恐怖にとらわれて一粒も食べられない友人。
数年前から摂食障害に悩み、「お米は大好きなのに『糖質は太る』という情報が(頭に)こびりついてしまって」「恐怖心が勝ってしまって食べたいのに食べられない」と言うフォロワーの方。
私の場合はお米は食べられたが、お米に限らず「ある特定の食べ物に対する恐怖感」は経験的に痛いほどわかる。だからこそ、「お米を食べよう」と気安く押し付けることはできない。
ここまでいかずとも、ボディメイクやダイエットを目指す人の中に、「高タンパク質・低糖質」を心がけている人は多い。中には炭水化物の必要性を説く人もいるが、動画共有サイトやSNSなどでは、タンパク質を意識したボリュームのあるおかずをとる一方でお米は少量に抑える人、運動しない日はなるべく炭水化物をとらないという人、炭水化物は朝食だけしか食べない人、高タンパク質の食材を入れたサラダしか食べない人、たっぷりの肉ともやしだけを食べる人など、「糖質は太る」を象徴するような情報が溢れている。
たとえこれが常食されているものではなかったとしても、できるだけ炭水化物を減らした食事を勧めるような情報に触れ続けているうちに、「糖質は太る」というイメージが視聴者・閲覧者の「頭にこびりつく」のも無理はない。
お米の消費が減り続けている要因の中には、人口減少、炊飯の手間のほか、「パンが食べたい」「パスタが食べたい」「ラーメンが食べたい」など積極的な小麦食の選択も挙げられるが、こうした「太りたくないから」という理由で米食を拒否する層は実感的に多い。
統計的にはどうだろうか。農林水産省が2020年に行った「米の消費動向に関する調査」を見てみると、5年前よりも自身のお米の消費量が「減ってきている」と答えた人たち(28%)の理由(複数回答可)は、「副菜・おかずを食べる量を増やし、主食を食べる量を減らしたから」(29%)が最も多く、次に多いのは「主食も副菜も含めて、食べる量を減らしたから」(28%)だった。
一方で、同調査の「未来の子どもたちに食べさせたい理想的な主食」の問いには、92%が「ご飯」と答えるなど、お米のイメージは断トツに良い。
ところが、2020年に行われた内閣府「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」では、「米を食べると太ると思うか」という問いに対して「そう思う」と答えた人の割合は24年前の同調査に比べて2ポイント増加、「そうは思わない」と答えた人の割合は29ポイント減少した。
やはり、「ごはんを食べる量を減らした人」「お米を食べると太ると思う人」は少なからずいることがわかる。
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