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高橋治之、竹田恒和を結び五輪汚職の温床にもなった「慶応三田会」 正と負の吸引力の源泉

華麗なる学閥を支える評議員選挙の狂騒

石川智也 朝日新聞記者

最高機関の評議員会は慶応の「国会」?

 無報酬の評議員になぜここまで固執するのか。他大学出身者からすれば理解を超えている。

 「評議員会」自体は私立学校法に定められた組織で、どの学校法人にもある。ただ、大抵は理事会の諮問機関的位置づけにとどまる(日大前理事長の脱税事件など相次ぐ私大の不祥事を受けて、文部科学省は現在、評議員会の権限強化を図る法改正を検討中)。

 ところが慶応の場合は、理事会よりも古い「最高決議機関」として、理事長兼学長である「塾長」の選任、予算承認、学部設置など強い権限があるのが特徴だ。なおかつ、その評議員の大半を塾員が直接・間接の選挙で選ぶ。

 卒業生の意思を強く経営に反映できるこうしたシステムは、他の主要私大では見られない。その起源は明治10年代、義塾が財政難に陥った際、卒業生から集めた寄付金を信託管理する仕組みを作ったことにある。これは米国東部の名門私大の運営方式を採り入れたものとされる。

 後の法人化に伴い作られた理事会よりも、法律よりも、慶応の評議員会の歴史は古い。「社中協力」は制度としても義塾運営の中核にあるということになる。

 慶応関係者は「国民主権」をもじって「塾員主権」という言葉を使う。つまり評議員会を国会、執行機関である理事会を内閣になぞらえているわけだ。

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 しかし実際のところ、この「最高機関」は国会というよりは戦前の帝国議会、それも貴族院に近いのではないか。

 実は、各界の要人が並んだ今回の60人の卒業生評議員候補者のうち、56人は理事会が推薦した候補者だ。他4人は、塾員100人以上の署名を集めれば候補者になれるという制度を使って立候補した。もっとも、この4人の肩書は「衆議院議員・財務大臣政務官」「西日本鉄道相談役」「西山電気社長」「慶応義塾名誉教諭」と、組織票が期待できる面々ばかり。

 西富亮介も2006年、この制度を使って友人たちの署名を集め立候補した。コンサルタント会社のヒラ社員という立場ながら次点から繰り上げ当選、話題をさらったのも、組織票を持つ候補をおさえて勝ち上がることがいかに珍しいかを物語る。

 しかも、さらにカラクリがある。

 投票終了後の今年10月31日に発表された今期の新評議員には、落選した候補者30人中なんと29人が名を連ねていた。

 これは、当選組30人と、前期評議員会の推挙で既に無選挙で選ばれていた25人との合議で、有為の人材30人を「塾員評議員」として選ぶ仕組みがあるためだ。青井浩・丸井グループ社長、今井義典・NHK会友、杉江俊彦・三越伊勢丹会長、宮内正喜・フジテレビジョン会長らもこのカラクリで救済された。

 各候補者の得票数や塾員評議員の選出過程は、一切公表されていない。慶応義塾広報室は「評議員選挙の運営につきましては、関連の会議体で定められたことに則って行っており、基本的には前例に倣って進めてまいりました」とだけ説明する。

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 結局のところ、評議員会は実業界を中心にした三田会人脈の頂点に位置している――それが過熱の一番の理由だ。現評議員の多くは連合三田会の役員出身あるいは兼務者で、ここまで一流企業のトップが並ぶ組織は他に経団連ぐらいだろう。評議員会は「最高の三田会」の異名もある。

 企業人の塾員が評議員選挙の集票に熱心なのは、評議員候補者を陰に陽に支援し三田会人脈の中枢に近づくことで、有形無形の利益があると期待させるからに他ならない。

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。社会部でメディアや教育、原発など担当した後、特別報道部を経て2021年4月からオピニオン編集部記者、論座編集部員。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所客員研究員。著書に『さよなら朝日』(柏書房)、共著に『それでも日本人は原発を選んだ』(朝日新聞出版)、『住民投票の総て』(「国民投票/住民投票」情報室)等。ツイッターは@Ishikawa_Tomoya

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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