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高橋治之、竹田恒和を結び五輪汚職の温床にもなった「慶応三田会」 正と負の吸引力の源泉

華麗なる学閥を支える評議員選挙の狂騒

石川智也 朝日新聞記者

内部進学者が醸し出す「慶応」のイメージ

 人脈の影響力は時に企業そのものの関係にも及ぶ。三越と伊勢丹の「結婚」も、あるいは破談になったキリンとサントリーの統合話も、トップ同士が慶応の同窓だったことから始まったことは有名だ。

 加えて、さらにセレブ感を醸し出しているのは、オーナー企業や同族企業、創業家出身のトップが多いことだろう。日清食品ホールディングス、大正製薬、中外製薬、資生堂、大林組……挙げれば枚挙にいとまがないこうした世襲経営者は、親子にわたって慶応出身だったり、幼稚舎(小学校)からの進学組だったりする場合が少なくない。

 「慶応ボーイ」という言葉で世間がイメージするカラーや文化を作っているのは、幼稚舎からの内部進学組だ(山内マリコ著『あのこは貴族』では、そのあたりがかなり戯画的に描かれている)。ただ、彼ら自身は「慶応的なるもの」を意識はしない。中華思想もない。母校愛が強く三田会の活動に積極的なのは、むしろ大学からの入学組だ。

 「マージナルな存在ほど、中心に近づきたがる。これは信仰の構造、あるいは秘密結社の力学と同じ」。『慶應三田会』の著書もある宗教学者・島田裕巳の解説である。

 実際には「秘密」など存在しない。それでいて秘密性はあり、そのこと自体は公然である。なんとも逆説的だが、排他的かつオープン、そして社会的プレステージがある。まさにフリーメイソンのように――ということかもしれない。

1972年9月27日、三越三田会の総会に続々つめかける三越の慶応ボーイたち=東京都千代田区内幸町の帝国ホテル拡大1972年9月27日、三越三田会の総会に続々つめかける三越の慶応ボーイたち=東京都千代田区内幸町の帝国ホテル

五輪汚職の舞台になった慶応人脈

 同質的な結束力はいうまでもなく諸刃の剣である。そして、慶応の華麗なるブランドが負の吸引力と化した典型例が、五輪汚職だった。

 東京五輪・パラリンピックをめぐるスポンサー選定事件は最終的に5ルートに拡大し、大会組織委員会元理事の高橋治之が4回逮捕され、計15人が起訴された。東京地検特捜部の捜査の焦点の一つが、組織委副会長で日本オリンピック委員会(JOC)会長、五輪招致委理事長も務めていた竹田恒和の関与の有無だった。

 「五輪汚職」には、国内のスポンサー選定事件ともう一つ、五輪招致をめぐるIOC委員買収疑惑があり、竹田は、贈賄工作をした日本の責任者としてフランス当局の捜査対象になっている。

記者会見して疑惑を否定する竹田恒和JOC会長(当時)=2018年1月拡大記者会見して疑惑を否定する竹田恒和JOC会長(当時)=2018年1月

 高橋と竹田を結びつけたのが慶応人脈である。竹田の次兄で三つ年上の恒治が高橋の同級生で、高橋は竹田を「カズ」と呼ぶ仲だったという。いずれも幼稚舎からエスカレーターで慶大に進んだ。

 2001年に竹田がJOC会長に就く際、電通常務だった高橋は、名誉職で無報酬だった会長職を年1500万円の有給制に変えるために尽力したとされる。そして、2014年2月、組織委の会議で高橋の理事就任を訴えたのは竹田だった(議事録による)。

 組織委会長を務めた森喜朗(早大卒)は『遺書 東京五輪への覚悟』に、竹田についてこう記している。

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。社会部でメディアや教育、原発など担当した後、特別報道部を経て2021年4月からオピニオン編集部記者、論座編集部員。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所客員研究員。著書に『さよなら朝日』(柏書房)、共著に『それでも日本人は原発を選んだ』(朝日新聞出版)、『住民投票の総て』(「国民投票/住民投票」情報室)等。ツイッターは@Ishikawa_Tomoya

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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