実質為替レートが示す円安の本当の意味
2022年12月08日
今年に入って外国為替市場で急激に円安が進み、日本経済にとって最も重要な為替レートである円ドルレートは、昨年末には110円台前半だったのに、10月には147円となった(以下、特記しない限り、為替レートは17時時点月中平均)。約30年ぶりの円安水準である(朝日新聞10月15日付朝刊)。その後、やや円高が進み、11月は142円、12月7日11時時点では137円である。
しかし、現在の名目為替レートは、その対ドル購買力でみれば、30年ぶりどころか半世紀ぶりの円安水準なのだ。わざわざ「名目」為替レートと書いたのは、実体経済にとってより重要な「実質」為替レートと区別するためである。実は、1973年2月に1ドル308円の固定相場制から変動相場制に移行して以来、現在、その実質為替レートが最も円安となっているのである。
実質為替レートと混同しやすい概念として「実効」為替レートという別の概念がある。こちらは米ドルをはじめ貿易相手国通貨との為替レートを加重平均したもので、日本銀行が公表している。実は、日銀は名目実効レートとならんで実質実効レートも公表しているけれども、円ドルレートの実質レートは公表していない。以下、円ドル実質為替レートは、筆者が日米の消費者物価指数(日本は総合指数、米国はCPIAUCNS)から計算したものであることをお断りしておく。
まず、実質為替レート概念の詳細に入る前に、円ドルレートと日米金利差の関係について、簡単に触れておく。
現在の円安の理由については、日米間で金利差が拡大しているからだというのが、通説になっているようである。しかし、図1で示したように、ここ1年のデータだけをみれば、通説は正しいようにみえるけれども、半世紀にわたる時系列でみると、円ドルレートと日米金利差(米国のフェデラル・ファンド・レートから日本のコール・レートを引いたもの)の関係はそれほど単純ではない。
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