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今春交代、日銀新総裁を待ち受ける課題

世界的不況の中で日本だけが高い成長率を維持できるか

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 日本銀行の黒田東彦総裁の任期は2023年4月8日まで。2013年から10年間総裁を務めたが、これは戦後最長。一万田尚登元総裁は8年6カ月務めたが、それを抜いて歴代最長を記録している。ただ、年齢などを考慮すれば、再任はないと見られている。黒田総裁は就任以来、「異次元金融緩和」と呼ばれた積極的金融緩和政策を続け、日本経済の景気回復を後押ししてきた。アメリカが金融引締めを続けている中での日本の金融緩和は、当然、ドル高・円安を招いた。そして、黒田総裁は「円安は日本経済・物価にプラス」と繰り返し発言し、2013年以来の金融緩和路線を2022年12月まで堅持してきた。

米経済に陰り、日本は順調に回復

記者会見する日銀の黒田東彦総裁=2022年11月14日、名古屋市、代表撮影記者会見する日銀の黒田東彦総裁=2022年11月14日、名古屋市、代表撮影

 その結果、日本経済はデフレから脱却し、ようやく物価上昇率が1%を超えるまでに回復してきている。これは黒田総裁の大きな業績であり、評価されるべき成果である。しかし、その結果として円安は続いてきたわけなのだ。2021年9月には1ドル110円を切っていた円ドルレートは、2022年9月13日には1ドル142.53円と1ドル140円を超えることになってしまった。

 しかし、ここにきて、状況が大きく変化する気配が出てきたようだ。堅調だったアメリカ経済に若干の陰りが見えてきたのだ。アメリカ経済の成長率は2022年第1四半期にマイナス1.4%まで落ち込んでしまった。市場予想のプラス1.0%を大きく下回っている。

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