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酪農経営は本当に苦しいのか?

飼料の輸入価格は上昇しているが……構造的歪みを見逃していないか

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 トウモロコシなど穀物の国際価格が上昇して、それを飼料として使う畜産経営が苦しくなっていると報道される。特に、テレビでは、酪農経営が困難になっていると紹介されることが多い。同じく飼料価格が上昇して経営に打撃を受けても、養豚農家がテレビに出ることは少ない。おそらく、多くの人は広い草原で草を食むクリーンな牛をイメージして、その牛を飼っている酪農家にも親近感や同情の念を持つのだろう。放送する側も、テレビの画面に豚が出るより牛が出る方が視聴者にアピールすると考える。「このままでは多くの酪農家が離農する」という専門家のコメントに多くの人が納得する。

写真素材ID: 562342921
農業、農業、畜産のコンセプト – 牛の群れが酪農場の牛小屋で干し草を食べている Ground Picture
拡大Ground Picture/shutterstock.com

厳しい年も良い年もあるはずだ

 確かに、2022年畜産農家が飼料として使う輸入トウモロコシの価格は上昇している。畜産では、飼料代がコストの大部分を占める。豚肉、ブロイラー、鶏卵などでは、飼料代が8割程度も占める。畜産物は飼料の加工品と言ってよいくらいである。

 酪農の場合も、労働費を除くと、飼料代は費用の半分程度を占めるので、トウモロコシを原料とする飼料の価格上昇は、酪農経営にマイナスの影響を与えることは間違いない。

 しかし、経営が苦しいのは、酪農・畜産ばかりではない。コロナ禍で客が減少した、飲食店、ホテル・旅館、航空業界など、多くの業者が経営に苦しんでいる。これらの業者も今年だけの損益を考慮して経営を行っているのではないはずだ。それ以前の酪農経営はどうだったのだろうか?

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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