飼料の輸入価格は上昇しているが……構造的歪みを見逃していないか
2022年12月26日
トウモロコシなど穀物の国際価格が上昇して、それを飼料として使う畜産経営が苦しくなっていると報道される。特に、テレビでは、酪農経営が困難になっていると紹介されることが多い。同じく飼料価格が上昇して経営に打撃を受けても、養豚農家がテレビに出ることは少ない。おそらく、多くの人は広い草原で草を食むクリーンな牛をイメージして、その牛を飼っている酪農家にも親近感や同情の念を持つのだろう。放送する側も、テレビの画面に豚が出るより牛が出る方が視聴者にアピールすると考える。「このままでは多くの酪農家が離農する」という専門家のコメントに多くの人が納得する。
確かに、2022年畜産農家が飼料として使う輸入トウモロコシの価格は上昇している。畜産では、飼料代がコストの大部分を占める。豚肉、ブロイラー、鶏卵などでは、飼料代が8割程度も占める。畜産物は飼料の加工品と言ってよいくらいである。
酪農の場合も、労働費を除くと、飼料代は費用の半分程度を占めるので、トウモロコシを原料とする飼料の価格上昇は、酪農経営にマイナスの影響を与えることは間違いない。
しかし、経営が苦しいのは、酪農・畜産ばかりではない。コロナ禍で客が減少した、飲食店、ホテル・旅館、航空業界など、多くの業者が経営に苦しんでいる。これらの業者も今年だけの損益を考慮して経営を行っているのではないはずだ。それ以前の酪農経営はどうだったのだろうか?
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