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お絵描きAIが拡散させる「偏見」は誰が埋め込んだのか

女性は肌を露出させ、グラマーであるべし!?

小林啓倫 経営コンサルタント

 特定の人物の顔や姿を絵にして残す「肖像画」。その歴史は古く、古代ギリシャや古代ローマの時代から、実在の人物をモデルとしたと考えられる芸術作品が数多く見られる。中世ヨーロッパでは貴族がお抱えの肖像画家を持ち、彼らはモデルを理想的な姿で描くことで、雇い主からの寵愛を得ていた。

 そしていま、誰でも簡単に肖像画を描いてもらえる時代が到来している。ただしその肖像画家は、人間ではない。膨大なデータで訓練された、AI(人工知能)が絵を描いてくれるのだ。

拡大肖像画AI「Lensa」が生成した筆者の肖像画「Mystical(神秘的)」バージョン

 これはそうしたAIのひとつ、Lensa(レンザ)というアプリが描いた筆者の肖像画である。Lensaに参考となる自撮り写真を10枚ほどアップロードすると、こうした肖像画を何パターンも生成してくれるのだが、表情や衣服はAIが自ら判断して描いている。

 この画像に描かれているガウン風の衣装もそうで、筆者がこんなファンタジー映画の登場人物のような服を持っているわけではない。また筆者は確かに白髪交じりの髪をしているが、これほど美しいロマンスグレーでもない。顔だちもかなり精悍になっていて、どうやら現代のAI肖像画家も、依頼主の気分を良くさせるすべを心得ているようだ。

 こうしたお絵描きAIの目的はあくまでも娯楽で、SNSでシェアして友達からの反応を楽しむ、プロフィール画像に使って驚かせるといった使われ方が主だ。しかしいま、そうした気楽なエンターテインメントの世界の話だからといって、軽視してはいられないような問題が指摘されている。


筆者

小林啓倫

小林啓倫(こばやし・あきひと) 経営コンサルタント

1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『今こそ読みたいマクルーハン』(マイナビ出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(トーマス・H・ダベンポート著、日経BP)など多数。また国内外にて、最先端技術の動向およびビジネス活用に関するセミナーを手がけている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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