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「出生数80万人割れ」が示すこの国の明日の姿

日本は戦後100年で繁栄のステージを降りるのか 2023年が分岐点だ

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 日本総研は昨年11月、2022年の出生数が約77万人にとどまるとの予測を発表した。前年より4万人(5%)減り、日本が元気だった1980年代の約半分の水準だ(下のグラフ)。80万人割れは国立社会保障・人口問題研究所が予測していた2030年より8年も早い。

出生数の推移

 これはコロナ禍による一時的な現象と甘く見てはいけない。戦後日本の年金・消費・教育・財政など、政府や民間が前提としてきた人口の条件が崩れ、未経験のステージに移る先触れである。

生まないのは「経済的に余裕がないから」

 出生数は1990年から2015年まで100万人の大台を維持していた。それが16年以降急落している。その理由は同研究所の「出生動向基本調査」が明快に示している。

 2015年の調査で、希望する子どもの数(平均2.32人)を持たない夫婦にその理由を聞いたところ、圧倒的に多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎる」だった。経済的に余裕があれば生みたいが、そうではないから生まないというのだ。

 2021年の調査では、夫婦が希望する子ども数は平均2.25人で、0.07人少なくなった。また独身者に結婚しない理由を聞くと、「家族を養う責任がなく気楽だから」が増加していた。

 同研究所は「家族をつくろうという意欲が一段と低下する傾向にある」と分析する。結婚や出産、国の行く末などを考える前に、自分の生活で精一杯という諦めが読み取れる。

生まれたばかりの赤ちゃんでいっぱいの新生児室=13日、福岡市中央区の東野産婦人科で、水野義則撮影 2008年3月13日福岡市の産婦人科で。2008年の撮影当時、新生児室は生まれたばかりの赤ちゃんでいっぱいだったが

企業の持続的な賃上げと公的予算の拡大を

 つまり出生数急落の主因は低賃金にある。解決策は(イ)賃金を大幅に引き上げる、(ロ)政府や自治体が出産・育児を金銭面でもっと支援する、の二つである。

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