国頼みの原発産業。無謀な政策の強行は国民負担を増やすだけだ
2023年01月27日
昨年末に官邸で開催された第5回GX実行会議では、議長である岸田首相が「150兆円超のGX投資を官民で実現していくため、国として20兆円規模の大胆な先行投資支援を実行する」と述べるとともに、GX実現のための法案を次期通常国会で成立させる考えを示した。
昨年8月の第2回の会議では、岸田首相が「電力需給ひっ迫という足元の危機克服のため、今年の冬のみならず今後数年間を見据えてあらゆる施策を総動員し不測の事態にも備えて万全を期していく。特に、原子力発電所については、再稼働済み10基の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応を採る」と原発再稼働に期待をかけた。
第5回の会議では、事務局の経済産業省より具体的な「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が提示され、その通り決定した。そこには次世代革新炉の開発・建設や運転期間に関する新たな仕組みの整備なども盛り込まれた。
その内容を整理すると次のようになる。
【既存の原発に関して】
・安全最優先で再稼働を進める。
・可能な限り原発を活用するため、運転期間に関する新たな仕組みを整備する。現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。
【新増設に関して】
・将来にわたって持続的に原発を活用するため、廃止を決定した炉の次世代革新炉への建て替えを行う。そのために新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。
【原子力産業に関して】
・研究開発や人材育成、サプライチェーン維持・強化に対する支援を拡充する。
【原子力政策の維持に関して】
・六ヶ所再処理工場の竣工目標達成など核燃料サイクル推進、廃炉の着実な実施をする。
・最終処分の実現に向けた国民理解の促進や自治体等への働きかけを抜本的に強化する。
しかし、これらの方針とロードマップは、実現可能性、経済性、合理性、必要性などの点でおおいに疑問がある。
再稼働には原子力規制委員会が新規制基準に適合していると認めるとともに、自治体の同意が必要だが、第6次エネルギー基本計画において電源構成上、原子力を20~22%にする2030年まであと8年しかない。
現在、再稼働した原発が10基、原子力規制委員会が新規制基準に適合したと認めた原発が7基、審査中の原発が8基、まだ原子力規制委員会に申請をおこなっていない原発が8基となっているが、東海第二原発など適合を認められた7基の原発でさえ、まだ再稼働できずにいる。
立地している地元は賛成でも、周辺自治体の住民が納得しておらず、避難計画の実効性にもまだ疑念がある。今後、再稼働に反対する団体などが起こす訴訟の結果によっても大きく左右される。
既設原発の再稼働が当面の電力不足や国際的な資源争奪から逃れるための対策として役立つことはその通りだが、再稼働する原発の基数が少なければ効果は限定的だ。
原発を再稼働させれば必然的に使用済み燃料が発生するが、日本原燃の再処理工場の使用済み燃料プールはすでに満杯で、全国の原発から新たな使用済み燃料を送り込める余地はない。日本原燃は先月26日に「再処理工場は2024年度上期のできるだけ早い時期に完成させる」と発表した。
当初は1997年度に完成する予定だったが、これで26回延期されたことになる。少なくとも、それまでは再処理工場の使用済み燃料プールは満杯状態が続くので、各地の原発の再稼働が実現しても、稼働すればするほど、原発建屋内のプールの使用済み燃料が増えることになる。
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