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GX実行会議が目指す「原発回帰」は実現不可能だ~コスト高と技術者減で「国策民営」は限界にきている

国頼みの原発産業。無謀な政策の強行は国民負担を増やすだけだ

北村俊郎 元日本原子力発電理事

 昨年末に官邸で開催された第5回GX実行会議では、議長である岸田首相が「150兆円超のGX投資を官民で実現していくため、国として20兆円規模の大胆な先行投資支援を実行する」と述べるとともに、GX実現のための法案を次期通常国会で成立させる考えを示した。

GX実行会議で発言する岸田文雄首相=2022年12月22日、首相官邸拡大GX実行会議で発言する岸田文雄首相=2022年12月22日、首相官邸

 昨年8月の第2回の会議では、岸田首相が「電力需給ひっ迫という足元の危機克服のため、今年の冬のみならず今後数年間を見据えてあらゆる施策を総動員し不測の事態にも備えて万全を期していく。特に、原子力発電所については、再稼働済み10基の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応を採る」と原発再稼働に期待をかけた

 第5回の会議では、事務局の経済産業省より具体的な「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が提示され、その通り決定した。そこには次世代革新炉の開発・建設や運転期間に関する新たな仕組みの整備なども盛り込まれた

 その内容を整理すると次のようになる。

【既存の原発に関して】
・安全最優先で再稼働を進める。
・可能な限り原発を活用するため、運転期間に関する新たな仕組みを整備する。現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。

【新増設に関して】
・将来にわたって持続的に原発を活用するため、廃止を決定した炉の次世代革新炉への建て替えを行う。そのために新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。

【原子力産業に関して】
・研究開発や人材育成、サプライチェーン維持・強化に対する支援を拡充する。

【原子力政策の維持に関して】
・六ヶ所再処理工場の竣工目標達成など核燃料サイクル推進、廃炉の着実な実施をする。
・最終処分の実現に向けた国民理解の促進や自治体等への働きかけを抜本的に強化する。

 しかし、これらの方針とロードマップは、実現可能性、経済性、合理性、必要性などの点でおおいに疑問がある。


筆者

北村俊郎

北村俊郎(きたむら・としろう) 元日本原子力発電理事

1944年、滋賀県生まれ。1967年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本原子力発電株式会社に入社。本社のほか東海発電所、敦賀発電所、福井事務所など現場勤務を経験したのち、理事・社長室長、直営化プロジェクトリーダーを歴任。主に労働安全、教育訓練、地域対応、人事管理などに携わり、2005年に退職。福島県富岡町に移り住む。同年から2012年まで社団法人日本原子力産業協会参事。福島第一原発の事故により、現在も避難を続けている。著書に「原発推進者の無念」(平凡社新書)「原子力村中枢部での体験から10年の葛藤で掴んだ事故原因」(かもがわ出版)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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