お米の「テロワール」を考える 味を決める要因は品種だけじゃない
環境、技術、人柄……毎日のお米をより楽しむために知るべきこと
柏木智帆 お米ライター、元神奈川新聞記者
ワインの世界には「テロワール」という言葉がある。原料となるぶどうを栽培する地域の土壌、地形、気候といった「地域特性」「自然環境要因」のことで、このテロワールがワインの味を左右すると言われている。
では、稲作においても「テロワール」は存在するのだろうか。
お米とぶどうの違いは?
ぶどうは土壌の影響を受けやすい品種とそうでない品種があったり、栽培技術や収穫した年の気候の影響によっても味わいが違ったりと、テロワールが味わいのすべてを決めるわけではないという。
しかしながら、ぶどうは一度植え付けたら長期にわたって収穫できる「永年作物」だ。
一方で、稲は毎年春に田んぼに植えられ、秋には収穫される「単年作物」であるため、田んぼで稲が育つ期間はたった4~5カ月ほど。地中に深く根を張り巡らせていくぶどうの木が地層の影響を受けやすいことに対して、稲は収穫されるたびにその切り株(稲株)は土壌にすき込まれ、翌年には新しい苗が植えられる。そして水田は取水と排水を繰り返しているため、水に含まれる養分の影響も大きい。

稲刈り後の田んぼにはコンバインに切り刻まれた稲わらや切り株が残る=筆者撮影
こうして見ていくと、土壌による食味への影響はあれども、その度合いはぶどうほど大きくないように感じられる。気候の影響はもちろん大きいが、毎年の土作り、苗作り、田植え時期、水管理、農薬や肥料、刈り取り時期、乾燥調整といった生産者の手の掛け方による影響も大きいと言えるだろう。