メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

実例から考える 私的再生(私的整理)のススメ

コロナ禍から中小企業が立ち上がるために

川原慎一 事業再生コンサルタント

 2022年11月の倒産件数は前年同月(468件)を大幅に上回る570件が発生した。コロナ禍以降では最長となる7カ月連続での増加となった。リーマンショック並みの倒産件数だ。今後倒産件数が減少することを期待するのは難しい。それは、中小企業にとってはコロナ禍での売り上げ減少、円高、物価高、人手不足に加えて、コロナ対策のいわゆるゼロゼロ融資が終わり、これからは返済が始まるためだ。資金繰りが一気に悪化する企業が相当数あると思われる。

スーパー閉店コロナの影響で長年愛されてきた地元のスーパーが閉店した。倒産を知らせる貼り紙のまわりにはいつしか「ありがとう」のメッセージと花が=写真コンテスト「コロナが変えた日常」入選、島忠史さん(愛媛県)の作品、2020年9月撮影

破産手続きをせずに事業を再生させる

 そんな状況にあって、本稿で勧めたいのは「私的再生(私的整理)」と呼ばれる「事業再生」のテクニックだ。「私的再生」とは法律に頼らず、債権者をはじめとする利害関係者に再生計画を説明して交渉を行い、破産手続きをせずに事業を再生させる実務だ。

 規模の比較的大きい企業ではむずかしいが、債権者の数が少なければぜひ検討すべきだ。自由裁量(法律に縛られず、一定の範囲で支払いや、行動が自由に行える)が可能であり、経営者にとっての事業再生となる。

 国は困窮する中小企業を再生させるためと称して昨年、中小企業再生支援協議会を中小企業活性化協議会に再編して支援に乗り出した。しかしその実態は銀行を始め、債権者サイドが支援の中心になっては、金融機関に債権放棄を促すことは極めて難しく、この体制で過剰な債務を抱えた企業を抜本的に再生することが果たして可能か、疑問は残されたままだ。

 本稿では再生コンサルタント20年間の経験から実例で国や法律に頼らず、債務者がイニシアチブをとって私的再生を果たした企業を紹介し、その実務を紹介する。

・・・ログインして読む
(残り:約4503文字/本文:約5194文字)