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日銀・黒田総裁のあまりに迷惑な置き土産

異次元の金融緩和、修正を迫られる株式・不動産市場、国の財政…

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 黒田東彦日銀総裁が今春に退陣する。後任が誰になるにせよ、黒田氏の10年にわたる異次元金融緩和やその「置き土産」の処理に頭を抱えることだろう。異次元緩和を正常に戻そうとすると、経済社会のいたるところで血が噴き出しかねないからだ。

「ゼロ金利は永遠に続く」という錯覚

 前総裁の白川方明氏は、朝日新聞のインタビュー「日銀・白川前総裁が語る10年前と金融緩和『あれが私の限界だった』」(2023年1月31日付)で「金融緩和を修正する際の難しさは何か」と問われ、「金融緩和の継続を前提にした行動が(政府・企業・家計に)深くビルトインされていること」と答えている。

 10年前、異次元緩和を掲げる黒田総裁の登場は「黒田バズーカ」と持てはやされた。しかし、就任から2年経つと、「すでに低金利の状態にある市場にいくら大量のマネーを投入しても消費は増えず物価も上がらない」という現実が明らかになった。

 それでも黒田氏は「2%の物価上昇を目指す」と言い張り、金融緩和を10年続けた。国民はゼロ金利が永遠に続くかのように錯覚し、それがこの国の経済活動の前提になった。

 しかし、欧米はいち早く金融緩和の正常化(金利引上げや量的引き締め)に進んでいる。日本も市場の圧力が高まっており、金利上昇は避けられない。白川氏はこの移行期に非常な困難が生じると指摘したのだ。

「臨時・異例の措置」の株式購入を一気に拡大

 まず株式市場でこの10年間に何が起こり、その歪みの是正がいかに困難であるかを見ていきたい。

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