公安権力を党直轄にして直接指揮へ 「西側との友好があと10年続いていれば……」
2023年03月09日
いま中国で開かれている全国人民代表大会(全人代)に異常な注目が集まっている。討議テーマの一つ「党と国家機構の改革案」の中に、公安や国家安全の機能を国務院(政府)から党直属に移し、監視・摘発を格段に強化する案が含まれているからだ。
この案は、2月末の第20期中央委員会第2回全体会議(2中全会)で習近平主席が説明し、可決された。香港紙などによると、党に移されるのは公安省(警察を統括)と国家安全省(スパイ摘発など)で、新設する「党中央内務委員会」の下に再編するという。
そのきっかけになったのは、コロナ下の昨年11月末、北京、上海、武漢など18都市で起きた「白紙運動」だ。SNSでつながった若者らを中心に、ゼロコロナ政策に抗議するデモが起き、習主席退陣を求める声も出た。抗議運動は海外の都市にも飛び火した。
今年2月には武漢市で、医療保険の通院補助金が削減されることに抗議する定年退職者ら数万人の抗議集会「白髭運動」が起きた。背景には不動産政策の失敗からくる地方財政の悪化がある。
いずれのケースも、特に主催者はいないのに巨大な抗議運動に発展した。この政府に対する不満や怒りは程度の差こそあれ全国民に共通する。何かのきっかけがあればSNSで一気に燃え上がる、と習政権は危機感を覚えたはずだ。
その結果出てきたのは、国民との議論や対話ではなく、党中央内務委員会の新設という強硬策だった。法律に基づく政府機関の行政と違い、党の政治的理由による恣意的な運用が横行する懸念がある。
党中央内務委員会の名称は、旧ソ連スターリン時代に国民を恐怖で支配した「内務人民委員部」を連想させる。刑事警察、秘密警察、諜報機関を統括し、反革命分子とみなした人物の逮捕や処刑、スパイ摘発をおこなった。KGBの前身である。
中国の人々は、こうした習氏の独裁強化をどう見ているのか。筆者が古くから知る中国経済人(60歳代、A氏と呼ぶ)に率直な意見を語ってもらった。A氏は日本でも企業経営に関わっている。
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