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物書きはどうAIと付き合えば良い? ChatGPTに聞いてみた

新聞記者もChatGPTを使うべきなのか

小林啓倫 経営コンサルタント

生成AIを「どう使わないか」を宣言するWired誌

 創業者ルパート・マードックで知られるNews Corpも、そうした企業のひとつだ。同社はオーストラリアの従業員に対し、ChatGPTを試すよう勧めたと報じられている(こちら)。

 同社は新聞や出版など多くのメディア事業を抱えており、生成AIが普及した際に、真っ先に仕事を奪われてしまいそうな人々が働いている。しかしエグゼクティブ・チェアマンのマイケル・ミラーは、社員に向けたメモの中で、同社が常に技術的な変化を受け入れてきたことを指摘し、ChatGPTがどのように利用できるかを知ることは価値があると指摘した。さらに社内に設置されたワーキンググループに対し、AIの利用価値が高い領域を探るよう指示したそうである。

 またテクノロジー分野のメディアとして知られるWired誌も、ウェブ上で「Wiredは生成AIツールをどう使用するか」と題された記事を公開し、生成AIを「どう使うか」だけでなく「どう使わないか」を宣言している。

拡大Wired誌がウェブ上で公開した記事「Wiredは生成AIツールをどう使用するか」
出典

 たとえば「AIを使ってストーリーのアイデアを生成してみるかもしれない」が、「AIが生成した文章を含むストーリーは公開しない」「AIによって編集されたテキストも公開しない」といった具合だ(このルールに従えば、いま私が書いている記事はWired誌では掲載してもらえないかもしれない)。

 彼らの姿勢や、利用に向けたルールを設けるという取り組みは、他の業界の企業にとっても参考になるものだろう。特にWired誌のように、自らがどこまでAIを利用しているのか・していないのかを公表するのは、従業員だけでなく、顧客や関係者からの信頼を得ることにもつながると考えられる。

 幸いなことに、現時点では、私のように文章を書いてお金をもらえるという(人間の)仕事が存在している。しかし大手IT企業がしのぎを削ってAI開発競争を進めている状況では、そうした仕事というパイがますます小さくなるのは火を見るよりも明らかだ。

 であれば、AIを全面的に否定するのではなく、AIをツールとしてどう使いこなしていくのかを考えるしかない。先ほどChatGPTも「従来の職業においても、AIと協調する能力が求められるようになるでしょう」と言っていたではないか。


筆者

小林啓倫

小林啓倫(こばやし・あきひと) 経営コンサルタント

1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『今こそ読みたいマクルーハン』(マイナビ出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(トーマス・H・ダベンポート著、日経BP)など多数。また国内外にて、最先端技術の動向およびビジネス活用に関するセミナーを手がけている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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