「知らん顔」の大企業も多く、いばらの道はまだ続く
2023年04月21日
今春闘の結果がほぼ出そろった。連合の最新集計では、回答を受けた3066組合の賃上げ額(定期昇給含む)の平均は月1万1022円、賃上げ率3.69%である。賃上げ率は2000年以降2%に張り付いてきた=下のグラフ。7月の最終集計で3%を超えれば、29年ぶりの高水準になる。
注目されるのは中小組合(300人未満、1975組合)で、賃上げ額は月8456円、賃上げ率3.39%と健闘した。
日本の労働者の約7割は中小企業で働いている。この人々の賃金を継続的に底上げしなければ国内消費は上向かず、日本経済の再生も難しい。そこで中小企業は来年以降も賃上げを継続できるかどうか、その条件は何かを考えてみたい。
上のグラフは、大企業(1000人以上)、中企業(100~999人)、小企業(10~99人)の年齢別の賃金を示している。
ほとんどの年齢層で、大企業→中企業→小企業の順に賃金が下がる。50歳男性では大企業48万円に対し、中企業は84%の40万円、小企業は73%の35万円である。その格差は今春闘によってさらに拡大する。
一方、企業規模別の労働分配率のグラフ(下)を見ると、まるで違う景色になる。労働分配率とは、企業の生産活動によって生み出された付加価値額(営業純益など)に対する人件費(給与や賞与)の割合をいう。
大企業は50~60%で上下しているが、中企業70~80%、小企業80~90%で推移し、大企業→中企業→小企業の順に労働分配率が高くなる。つまり中小企業ほど利益の中から目一杯の賃金を払っている。それでも大企業の水準には及ばない。
今回の春闘では、かなりの大企業が「早期妥結」「満額回答」で応じた。労働分配率を低く抑えている分、内部留保が増えて財務面の余裕があったと思われる。
一方、すでに労働分配率が高い中小企業からは「原材料費やエネルギー価格の高騰で、これ以上の賃上げはきつい」という声が多かった。
それでも10年ぶりの賃上げで対応したのは、人材不足が深刻だからだ。
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