2011年09月05日
初めてAKB48を見たのは結成半年足らずの2006年春。アイドルオタクの間では話題になりつつあったが、まだ秋葉原の劇場は、当日行っても入ることができた。
これまでのグループアイドルを全部煮詰めた、という印象だった。振り付けは「モーニング娘。」みたい(当時はモー娘の振り付けをしていた夏まゆみが担当していたから、当然かもしれないが)、衣装は制服向上委員会みたい、天井の低い常設劇場は東京パフォーマンスドールの原宿ルイードみたい……。客席も色々なアイドル現場で見かけた顔が目についた。
アイドルオタクの墓場、と言ってもいいだろうか。あんたらオタクはこんなのが好きでしょう、と見せつけられているような気がして、いやーな気分にさせられた。パフォーマンスがまだ拙劣だったこともあり、もう少しうまくなってから戻ってこよう、と距離を置くことになる。
今までのアイドルとは違うのでは、と思い直したのは、2007年秋に出た『48現象』(ワニブックス)という本を読んでからだった。事務所公認のタレント本はタレント本人の当たり障りのないインタビューやエッセーで作られているものだが、この本はAKB周辺の「現象」をまるごととらえようとしていた。
メンバーのポートレートや秋元康らスタッフへのインタビューだけでなく、劇場に集う「有名客」の群像などを通じて、ファン文化にも触れている。メンバーの「推され」「干され」(ステージでいい位置で歌えるか否か)など、これまでなら暗黙だったファン隠語も紹介している。客席のどの位置で鑑賞するかにも意味があることなど、しばらく見なかったうちに、独特の宇宙ができていたことを知った。
細かい活字はまるでミニコミで、今となっては「アーリーAKB」の雰囲気を伝える本といえる。アイドルオタクが織りなす独特の宇宙をとらえたルポはこれまでもあったが(古橋健二『アイドリアン超人伝説』1990年、金井覚『アイドルバビロン』1996年など)、タレント側も関与してつくられた本はまれだ。
「ライダー」と呼ばれる客のエピソードは感動的だ。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください