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セカンド童貞に恋の嵐が!?――ラブコメディーの快作『モテキ』

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 大根仁監督の『モテキ』は、最近まれに見るラブコメディーの快作だ。同じく大根が手がけたTVドラマ版とは、見違えるような出来である。

――物語はといえば、サブカル好きで恋愛下手な31歳草食系男子の藤本幸世(森山未來)の前に、ひょんなことから魅力的な3人の女子が現われ、恋の騒動を繰りひろげるというものだが、この映画の最大の魅力は、何といっても、超のつくほど快調なテンポの語り口にある。

拡大『モテキ』/主人公の藤本(森山未來、左)とヒロインのみゆき(長澤まさみ) (c)2011映画「モテキ」製作委員会

 しかも、プロットがたえずエエッ!? という意外な方向に急転するので、退屈しているヒマなどない。そして、そうしたスムーズなのに意表をつく場面展開を彩るのが、工夫をこらしたディテールの数々だ。

 すなわち、時に登場人物たちの心情をセリフ以上に切なく語ったりもする、新旧様々なJ-POPの挿入、それらの曲に合わせて何度か現われるカラオケモニター風のテロップ画面(むろん一種の字幕)、Baby cruising Loveが流れ街頭にPerfumeが突如出現して幸世や周囲の雑踏にいた人々と共に踊りだす大ミュージカル・シーン(まったくもって『モテキ』の肝はポップスなのだが、ひとつの曲で複数の場面をつなぐ、いわゆる音楽ブリッジもたくみに使われる)。

 さらに、幸世の思いを表すナレーション/モノローグ(独白)の、やや過剰なまでの多用や、ヒロインのみゆき(長澤まさみ)と幸世が出会うツールであり、その他さまざまに劇中で使われる小道具であるi-Phoneのツイッター画面、あるいは幸世の幻想シーン(幸世が棺桶に横たわった死後の世界や、長澤まさみ、麻生久美子らを前景にして、100人くらいの女の子たちが白いハッピの下に白ビキニで踊りまくるゴージャスな女神輿)、などなど……。

 そして、決定的なアクションを起こすのが、ほとんど

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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