2011年10月11日
事故検証の番組や連載記事をよく目にする。隠ぺいされていた内側が明らかになることはいいことだ。しかし、まだ検証されていない側面がある。それはメディア自身についてである。
3月11日以後、テレビを中心に何度も「メルトダウン(炉心融解)」はないという断言を聞いた。専門家といわれる国立大学教授たちが、繰りかえし言っていた。NHKだけではない。みな似たようなものだった。しかし、半年以上たった現在、すでに3月12日にメルトダウンしていた事実が判明している。政府をはじめ関係者はそれを事故直後に把握していたらしい。専門家はそういう真相を知っていて、あえて嘘をいっていたのか、それとも本当に、メルトダウンはないと信じたのか、いまだに明らかでない。
もちろん事故の検証はやるべきだし、これからも続けるべきだ。一方で、発表に追随してきたメディアは自分たちの報道をどのように検証・総括するのだろうか。事故直後からテレビに出ずっぱりだった専門家の顔をその後まったく見ない。そんなことも検証してしかるべきではないか。それがないとメディア不信は昂ずるばかりだ。
ここで、ようやく「世界」(岩波書店)の話題になる。震災直後の5月号の「世界」は増刷し3刷までいったと聞いている。たしかに店頭からあっという間に消えてしまった。6月号も重版したそうである。テレビ・新聞といった巨大メディアへの不信が募った結果だろう。
「世界」は一貫して、原発に疑いの目を持ち続け、事故の危険性を訴え続けていた数少ない雑誌である。その方針は一貫していた。原発事故はなかった方がいいのに決まっている。しかし、残念ながら警鐘は的中してしまったのである。
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