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ノーベル文学賞、ボブ・ディランにやっとけや!

近藤康太郎 朝日新聞諫早支局長

 新聞社というのは奇妙なところで、ノーベル賞のようなお祭りがあると、だれが受賞するのか予想して、受賞した場合の予定記事なんか用意しちゃったりして、いい大人がガン首揃えて、今か今かと発表を待ち受ける。

 今年のノーベル文学賞では、ボブ・ディランが取るのではないかという噂が広がった。だれが、どんな根拠で予想してんだか知らないが、アセアセした。これでもいちおうポピュラー音楽を担当しているのだから、ディランが受賞すれば、なにかひとくさり書かなきゃならん。ディランは2000年代に入って、その人気はほとんど神がかり。間抜けな評論を書こうものなら鼻で笑ってやろうという読者が、朝日の社内だけでも37人ぐらいいるのだ、たぶん。

拡大1997年、ケネディ・センター名誉賞を受けたボブ・ディラン(左)。ホワイトハウスでクリントン大統領夫妻(当時)と握手=ロイター

 告白するが、自分は最初、ディランの良さが分からなかった。しわがれ声は単調に聞こえたし、ライブを見にいっても、ギターがうまいんだか何なんだか、よく分からない。「だれかの倍音かなあ?」と思ってたらそれがディランのエレクトリックギターの音で、高校生でもしないような単調な3連をテレレ、テレレって延々弾いていた。

 確かにいい曲は多いけど、投げやりに歌っているみたいで曲がかわいそうとも思った。古くはバーズの「ミスター・タンブリンマン」や、ブライアン・フェリー「レッツ・スティック・トゥゲザー」、最近ではビリー・ジョエル「メイク・ユー・フィール・マイ・ラブ」まで、カバーの方がディランのオリジナルよりずっといいんじゃないかと思っていた曲も多い。

 10数年前のある雨の日、「雨の日の女」を聞いていて、突然、ディランの歌詞が頭にゴーンとぶつかってきた。目を覚まされた。 ・・・ログインして読む
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筆者

近藤康太郎

近藤康太郎(こんどう・こうたろう) 朝日新聞諫早支局長

1963年、東京・渋谷生まれ。「アエラ」編集部、外報部、ニューヨーク支局、文化くらし報道部などを経て現在、長崎・諫早支局長。著書に『おいしい資本主義』(河出書房新社)、『成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか』(水野和夫氏との共著、徳間書店)、『「あらすじ」だけで人生の意味が全部分かる世界の古典13』(講談社+α新書)、『リアルロック――日本語ROCK小事典』(三一書房)、『朝日新聞記者が書いた「アメリカ人が知らないアメリカ」』(講談社+α文庫)、『朝日新聞記者が書いたアメリカ人「アホ・マヌケ」論』(講談社+α新書)、『朝日新聞記者が書けなかったアメリカの大汚点』(講談社+α新書」、『アメリカが知らないアメリカ――世界帝国を動かす深奥部の力』(講談社)、編著に『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』(文春文庫)がある。共著に『追跡リクルート疑惑――スクープ取材に燃えた121日』(朝日新聞社)、「日本ロック&フォークアルバム大全1968―1979」(音楽之友社)など。趣味、銭湯。短気。

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