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 チャン・グンソクが新しいタイプの韓流スターであるもうひとつの特色は、セルフ・プロデユース志向がきわめて高い点だ。

拡大2011年8月7日、ソウル・オリンピック公園オリンピックホールで行なわれたアジアツアーの最終公演の様子を収録したDVD「JANG KEUN SUK 2011 ASIA TOUR Last in Seoul」が発売中 (c)PONY CANYON

 最近、K-POPの海外進出についての分析で、必ず言われるのが「戦略」という言葉だ。韓国の大手事務所は、入念なマーケティングに基づき、徹底的な教育システムとグローバルな戦略でスターを育成している、と。

 そのとおりである。ただ、この「戦略」ばかりを見ていては「韓流」の全体像はとらえられない。

 俳優とK-POPアイドルとの違いもあるが、いま日本で最も売れているグンソクについても、こうした「戦略」では説明ができない。「グンちゃん」をプロデュースしているのは他ならぬグンソク自身なのだから。

 若くしてそれが可能なのは、家族が運営する個人事務所に所属していることが大きい。

 一人っ子で、子役時代には母親がマネジャー代わりに付き添い、いまも彼をサポートする。韓国芸能界では、「奴隷契約」といわれる労働条件をめぐってスターと所属事務所の契約トラブルが問題となっているが、意思決定で事務所の意向に縛られるスターと違い、本人の自由が効く立場にあるのがグンソクの強みだ。

 6月の来日記者会見でも「自由な雰囲気でやりたい」という本人の意向によって「NG質問はなし」。会場に登場するなり、ファンに向かって、投げキスなぞしていた。韓流スターの会見はかしこまったものが多いが、日本のメディアの前でも自由奔放ぶりを見せる。

 そのキャラクターは幼いときから芸能界で活動してきたことで決定づけられたといえよう。子役モデル時代も含めると芸歴は20年近くにもなる。現場を遊び場として育ってきただけあって、現場では肝が据わり、自然体で仕事をしていることで知られる。

拡大(c)PONY CANYON

 子役で脚光を浴びても、大人の俳優として成功するとは限らないが、グンソクは珍しく成功した例といえよう(韓国では、俳優になるには、背が伸びるかどうかも重要な要素だ)。家庭の貧困や下積みといったハングリーなイメージから無縁の、順風満帆の歩みに見える。

 もっとも本人は、最近の韓国のトーク番組で、

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筆者

林るみ

林るみ(はやし・るみ) 朝日新聞「be」編集部員

1988年、朝日新聞社入社。「アサヒグラフ」編集部員、「パーソン」編集長、書籍編集部編集委員、「週刊朝日」編集部員、「AERA」編集部員などを経て、現在、朝日新聞「be」編集部。著者に『タイガとココア』、共編著に『IRISからわかる朝鮮半島の危機』『キム・ソナが案内する「私の名前はキム・サムスン」』『ホテリア――新版公式ガイドブック』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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