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「ウルトラQ」のマーブル模様は抽象表現主義? 

大西若人 朝日新聞編集委員(美術)

 ケムール人にさらわれたらどうしよう、自分もカネゴンになっちゃうんだろうか、と心配したり、M1号が繰り返す「私はカモメ」が怖くて夜寝れなかったり。

 まだ幼かったこともあって、「ウルトラQ」の物語で覚えていることといえば、そんな断片的な怖さの感触だけだ。むしろ最も鮮明な記憶は、オープニング映像といっていい。渦巻き状のマーブル模様が、古いドアがきしむような音とともに、渦巻きがだんだんほどけていって、中から「ウルトラQ」の文字が現れる、あれのことだ。

 あれから45年、現代美術のことを多少は知るようになった今思うのは、あの模様は米国の抽象表現主義の絵画、とりわけアクション・ペインティングと呼ばれたジャクソン・ポロックの表現に似ているのではないか、ということだ。

 もちろん、偶然の類似というのはいくらでもある。でも、「ウルトラQのオープニングは抽象表現主義を参考にした」とまでは言えなくても、「ウルトラQのオープニングの表現の背景には抽象表現主義がある」という邪推を、あえてしてみたくなる理由がいくつかあるのだ。

 抽象表現主義は、第2次世界大戦後、経済的にも政治的にも文字通り、超大国になった米国のニューヨークで生まれ、アートの中心がパリからニューヨークに移ったことを強く印象づけるものとなった。

 巨大なカンバスに、地も図も中心もはっきり分からないように、線や色面が広がっていき、見る者を包み込んで圧倒する。その代表作家が、ポロック。画面を床に置き、絵の具を滴らせたり、はねつけたり、と画家の身振り(アクション)が、絵画となってゆく。こうして、マーブル模様にも似た絵画が生まれていく。

 ウルトラQの本放送は、1966年。抽象表現主義がまだ熱気を帯びていた時期だし、

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筆者

大西若人

大西若人(おおにし・わかと) 朝日新聞編集委員(美術)

朝日新聞編集委員。1962年、京都生まれ。東京大学工学部都市工学科卒、同修士課程を中退し、1987年に朝日新聞社入社。東京本社、大阪本社、西部本社の文化部などで、主に美術や建築について取材・執筆。同部次長などを経て、2010年より現職。『大地の芸術祭――越後妻有アートトリエンナーレ2000』(現代企画室)、『リファイン建築へ――建たない時代の建築再利用術 青木茂の全仕事』(建築資料研究社)、『文藝別冊<永久保存版>荒木経惟』(河出書房新社)などに寄稿。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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