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広島東洋カープは『マネーボール』の夢を見るのか?

松谷創一郎 ライター、リサーチャー

 今年もカープは5位だった。この順位は、私も含めたファンからは「定位置」と呼ばれる。1998年以降の14シーズン中11回も5位だからだ。優勝したのも20年前の91年が最後。2005年に創設された楽天を除くと、もっとも優勝から遠のいているチームとなった。

拡大大勢のファンで真っ赤に染まった広島のマツダスタジアム=2011年10月

 私が子供の頃、カープはとても強かった。1975年の初優勝から91年までの17シーズンで6回も優勝したほどだ。そんなチームが低迷している原因は明らかだ。資金力が乏しいからだ。1993年のフリーエージェント(FA)制施行と、93年から2006年まで続いたドラフト会議における逆指名制度・自由獲得制度は、カープにとってはとても不利に働いた。

 周知のとおり、カープは12球団で唯一親会社を持たない独立採算のチームだ。その資金力の弱さは、選手総年俸に如実に表れている。2011年シーズンは、12球団でもっとも少ない18億4100万円だ。トップの巨人は38億3410万円なので、その半分にも満たない。

 しかし、この低迷を資金力のせいにばかりしていいのか? 実話をもとにした『マネーボール』は、この問いにひとつの答を導く映画だ。

 主人公は、ブラッド・ピット演ずるビリー・ビーン。彼は、オークランド・アスレチックスのGM(最高責任者)だ。ディビジョンシリーズに進んだ2001年シーズン終了後、資金力の乏しいアスレチックスは、チームの柱であるジェイソン・ジアンビやジョニー・デーモンをFAで放出することを余儀なくされていた。

 そんなある日ビリーは、イェール大卒のピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)と出会う。ピーターは、野球を統計学的に解析したセイバーメトリクスに明るく、ビリーはその才能を買う。そしてアスレチックスは生まれ変わっていく。

 原作は、2003年に出版されたマイケル・ルイスのノンフィクションだ。費用対効果を重視した経営学的要素も強いこの本は、瞬く間にベストセラーとなり、野球が盛んではないヨーロッパでもヒットした。映画『ソーシャル・ネットワーク』を手がけた脚本家のアーロン・ソーキンは、この原作を素晴らしい潜在能力を有しながらも野球選手として大成しなかった人間ドラマとして料理した。

 ビリーとピーターが重要視したのは、

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筆者

松谷創一郎

松谷創一郎(まつたに・そういちろう) ライター、リサーチャー

ライター、リサーチャー。1974年生まれ。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆し、国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がける。得意分野は、映画やマンガ、ファッションなどカルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネス業界について。著書に『SMAPはなぜ解散したのか』(SB新書)、『ギャルと不思議ちゃん論――女の子たちの三十年戦争』(原書房)。共著 に『どこか〈問題化〉される若者たち』(羽淵一代編、恒星社厚生閣)、『文化社会学の視座――のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』(南田勝也、辻泉編、ミネルヴァ書房)等。

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