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朝ドラの王道からはずれた「カーネーション」にはまってしまった

大西若人 朝日新聞編集委員(美術)

 「『おこるわよ』といった白紙同盟3人の心地よくも楽しい会話は、もう聞けないんだ」。NHKの連続テレビ小説「おひさま」にはまってしまい、10月1日の放送終了日には、心底がっかりしたものだ。

 あれから1カ月以上。今では、何の期待もしていなかった後継の「カーネーション」にすっかりはまっている。しかし、このドラマ、何から何まで「おひさま」の逆だといっていい。

 朝ドラの王道を行くような「おひさま」に対し、「カーネーション」は実に挑戦的、挑発的だ。まず主演女優。前者の井上真央は、小柄で丸顔という、樫山文枝、大竹しのぶに連なる朝ドラの典型。前向きで素直なヒロイン像がピタリとはまった。

拡大主人公・糸子を演じる尾野真千子(中央)、両親役の小林薫(右)と麻生祐未=NHK大阪放送局での出演者発表で

 対して、後者の尾野真千子は、長身でどちらかといえば般若顔。河瀬直美監督の映画『萌の朱雀』など、映画を中心に活躍してきた。左のこめかみのホクロも目につくし、ぱっと見、井上真央のように明るく可愛いわけでもない。今をときめく芦田愛菜ちゃんが驚異の演技力を初めて本格的に示した昨年のテレビドラマ「mother」で、なんと、愛菜ちゃんを虐待する若い母親を演じていたのだ。

 その記憶がまだ残るなか、朝ドラのヒロインに起用するなんて、まことに挑戦的だ。しかも今回のヒロイン小原糸子は「このボケナス。何ぬかしとんじゃい」といった感じで、しゃべる。朝ドラ史上、最も口汚いヒロインだろう。いくら岸和田が舞台とはいえ、これはすごい。

 そして主題歌は、どうみても朝じゃなくて夜のイメージの椎名林檎が歌う。

 画面も、朝ドラの王道らしく明るさに満ちた「おひさま」に対し(若尾文子のシーンは明るすぎたが)、「カーネーション」は「ハゲタカ」や「龍馬伝」のように暗い。朝ドラなのに、なんて暗いのでしょう(ま、今では奥行きのある画面なくしては「カーネーション」は成立しないと思えるわけですが)。

 とういわけで、朝ドラの王道からはずれまくったカーネーションに、当初は何の期待もしていなかった。

 しかし尾野が登場する2週目あたりから、がぜん面白くなる。 ・・・ログインして読む
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筆者

大西若人

大西若人(おおにし・わかと) 朝日新聞編集委員(美術)

朝日新聞編集委員。1962年、京都生まれ。東京大学工学部都市工学科卒、同修士課程を中退し、1987年に朝日新聞社入社。東京本社、大阪本社、西部本社の文化部などで、主に美術や建築について取材・執筆。同部次長などを経て、2010年より現職。『大地の芸術祭――越後妻有アートトリエンナーレ2000』(現代企画室)、『リファイン建築へ――建たない時代の建築再利用術 青木茂の全仕事』(建築資料研究社)、『文藝別冊<永久保存版>荒木経惟』(河出書房新社)などに寄稿。

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