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【2011年 ライブ ベスト5】 ロックは、エレキがズガドゴ鳴ってりゃいいのよ

近藤康太郎 朝日新聞西部本社編集委員兼天草支局長

(1)遠藤賢司(8/15 プロジェクトfukushima!)

(2)エリック・クラプトン&スティーブ・ウィンウッド(12/10 日本武道館)

(3)山本精一(12/8 スターパイン)

(4)イーグルス(3/1 大阪ドーム)

(5)割礼(2/11 MANNDARAII)

(1)なんでも大げさに書く言葉のインフレは、すなわちこれライターの怠慢でもあるのだが、しかしだ。ここのところのエンケンさんは、ほんと、神がかっていると思う。すでに新聞に書いたので繰り返さないが(http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201112140392.html)、敗戦記念日に福島市で開かれた夏フェスティバルに出演したエンケンは凄まじかった。トレードマークのグレッチギターで、「なんだこりゃ!?」みたいなどでかい大爆音を発して、雷と大雨まで呼びよせやがった。「なんで福島ばかりがこんな目に……」と泣きそうになったのだが、最後の曲で今度は太陽を引き寄せ、さっと消えていった。神々しい気がした。

拡大遠藤賢司=中村治氏撮影

 新作アルバム「ちゃんとやれ!えんけん!」を65歳となる2012年1月に出すのだが、これがまたすごい。タイトル曲がかかったとき、涙が出た。「なんだこりゃ!?」という、笑いながらの涙。

 わたしも、だれに頼まれたわけでもないのに新聞社以外にも原稿を書きまくっているのだが、寒くて暗い明け方には、なにが悲しくてこんなことやってんだと思わないでもない。そんなとき、「だれかお前に文章書いてくれって土下座でもしたのか? 好きで書いてんだろ? だったら、ちゃんとやれ!コンドー!」と心の中で叫ぶようになった。この曲は、ほんとうに効きますよ。

(2)クラプトンは確かに円熟のギターだった。だが、わたしはウィンウッドに感動したのだ。スペンサー・デイビス・グループで活動したのがまだ15歳の時。60年代にはトラフィックというバンドを結成して通の間では人気が出たが、80年代にポップに過ぎるアルバムを出してヒットしたことが逆に災いしたか、2000年代にはちょっと低迷気味だった。フジロックで来日したときも、観客動員は寂しいものだった。

 しかしこの人、歌とキーボードばかり注目されるが、ギターがむちゃくちゃうまい。味がある。人間が出ている。クラプトンよりよほどブルースを感じたのは、わたしの耳が悪いからか? アンコールで演奏した「ミスター・ファンタジー」のギターソロなんか、ブルースを土台にサイケデリックの新しい息吹が生まれる60年代ロック草創期の爆発音がそのまま解凍されていて、ちびりましたよ。

拡大山本精一=撮影・井上厚

(3)元ボアダムズのギタリストで、前衛ギターの名手という印象だったが、自分で歌を歌い始めて、最近、いちだんと輝いている。ポップでメロディアスな曲で、淡々と歌い、リードギターを弾くが、これがいいのだ。即興ギターソロだが、曲の構成は壊さない。きわめてポップな曲の中に、狂気のナイフのような前衛性がギラッと隠れている。ポップと前衛、両方できる人は、とっても少ないのだ。

(4)最高のメンバーで再結成し、日本でもツアーをした。「ホテル・カリフォルニア」

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筆者

近藤康太郎

近藤康太郎(こんどう・こうたろう) 朝日新聞西部本社編集委員兼天草支局長

1963年、東京・渋谷生まれ。「アエラ」編集部、外報部、ニューヨーク支局、文化くらし報道部などを経て現職。著書に『おいしい資本主義』(河出書房新社)、『成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか』(水野和夫氏との共著、徳間書店)、『「あらすじ」だけで人生の意味が全部分かる世界の古典13』(講談社+α新書)、『リアルロック――日本語ROCK小事典』(三一書房)、『朝日新聞記者が書いた「アメリカ人が知らないアメリカ」』(講談社+α文庫)、『朝日新聞記者が書いたアメリカ人「アホ・マヌケ」論』(講談社+α新書)、『朝日新聞記者が書けなかったアメリカの大汚点』(講談社+α新書」、『アメリカが知らないアメリカ――世界帝国を動かす深奥部の力』(講談社)、編著に『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』(文春文庫)がある。共著に『追跡リクルート疑惑――スクープ取材に燃えた121日』(朝日新聞社)、「日本ロック&フォークアルバム大全1968―1979」(音楽之友社)など。趣味、銭湯。短気。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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