2011年12月31日
『東京公園』(青山真治)
複雑微妙な人間ドラマを、奇をてらうことなく、鮮烈なショットの連打で描破した青山真治の力量に、あらためて感嘆。なかんずく、榮倉奈々のポテンシャル(潜在能力)を引き出し全開させた青山監督には、かつて「アイドル」たちの既成のイメージを強じんな演出力でひっぺがし、彼女らから未知のリアルさを引き出した相米慎二の姿が重なる。
『奇跡』(是枝裕和)
相米慎二以後の「子ども映画」の名手といえば、是枝裕和だ。今回も是枝は、子どもを過度に「カワイらしく」撮るという罠を、賢明に避けつつ、子どもたちの言動を軸に、オトナ、街、自然をじつに的確なスタンスで撮っている。つまり、安易な感傷に流れず、なおかつ繊細な抒情をただよわせる、というアクロバットをやってのけるのだ。「世の中には無駄なもんが必要なんや、ぜんぶに意味があってみ、息苦しいでえ」、というオダギリジョーのセリフもいいなあ。
『まほろ駅前多田便利軒』(大森立嗣)
上記2作に優るとも劣らず、しがない便利屋コンビの共同生活、ペットを飼う人間のエゴイズム、ワケあり家族……といった難しいモチーフを、「付かず離れず」の微妙な距離でデリケートに描いた大森監督の手腕に感服。ベタつかない人情劇を撮ることは至難の技なのに、大森も青山も是枝も、楽々と(少なくともそう見える)それをなし得ているのは、日本映画がいまだかなりの高レベルを維持しているからだ(と思いたい)。主役の瑛太、松田龍平ら、そしてハイテンションの“突き抜け”キャラを演じる鈴木杏(あのアバター顔の杏ではない)が実にいいし、まほろ駅界隈の底冷たい空気感も生々しく伝わってくる。また、過去と現在の映像を交互に見せる手法や、クライマックスの省略法もみごと。
『モテキ』(大根仁)
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください