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【2011年 日本映画ベスト4+ワースト1】 邦画はかなりの高レベルを維持している(と思いたい)

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 <日本映画ベスト4(順不同)>

拡大『東京公園』

『東京公園』(青山真治)

 複雑微妙な人間ドラマを、奇をてらうことなく、鮮烈なショットの連打で描破した青山真治の力量に、あらためて感嘆。なかんずく、榮倉奈々のポテンシャル(潜在能力)を引き出し全開させた青山監督には、かつて「アイドル」たちの既成のイメージを強じんな演出力でひっぺがし、彼女らから未知のリアルさを引き出した相米慎二の姿が重なる。

『奇跡』(是枝裕和)

 相米慎二以後の「子ども映画」の名手といえば、是枝裕和だ。今回も是枝は、子どもを過度に「カワイらしく」撮るという罠を、賢明に避けつつ、子どもたちの言動を軸に、オトナ、街、自然をじつに的確なスタンスで撮っている。つまり、安易な感傷に流れず、なおかつ繊細な抒情をただよわせる、というアクロバットをやってのけるのだ。「世の中には無駄なもんが必要なんや、ぜんぶに意味があってみ、息苦しいでえ」、というオダギリジョーのセリフもいいなあ。

『まほろ駅前多田便利軒』(大森立嗣)

 上記2作に優るとも劣らず、しがない便利屋コンビの共同生活、ペットを飼う人間のエゴイズム、ワケあり家族……といった難しいモチーフを、「付かず離れず」の微妙な距離でデリケートに描いた大森監督の手腕に感服。ベタつかない人情劇を撮ることは至難の技なのに、大森も青山も是枝も、楽々と(少なくともそう見える)それをなし得ているのは、日本映画がいまだかなりの高レベルを維持しているからだ(と思いたい)。主役の瑛太、松田龍平ら、そしてハイテンションの“突き抜け”キャラを演じる鈴木杏(あのアバター顔の杏ではない)が実にいいし、まほろ駅界隈の底冷たい空気感も生々しく伝わってくる。また、過去と現在の映像を交互に見せる手法や、クライマックスの省略法もみごと。

『モテキ』(大根仁)

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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