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ぶっちぎりの面白さ!――『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(以下『M:I-4』)は、シリーズ4作中、ぶっちぎりの面白さだ。

 お話は、極秘スパイ組織IMFの諜報員トム・クルーズが、危機一髪の状況を超人的な身体能力、知力を駆使して切り抜ける、というおなじみのもの。しかし『M:I―4』は、マンネリに陥るどころか、前3作には欠けていた<語り>のスマートさ、歯切れの良さがじつに斬新で魅力的だ(メガホンをとったのが、アニメの名手だが実写は初挑戦のブラッド・バード、というのも驚き)。

 たとえば、息もつかせぬ冒頭シーン。――ビルの屋上を走るIMFのスパイが、何人もの敵を拳銃の速射で次々と倒し、さらに地上めがけて両手をひろげてジャンプしながら、二丁拳銃で追っ手を射殺するという“空中戦”が展開される。

 地面に着地した彼は、拳銃を懐に隠し、スマホ型の機器をいじりながら何くわぬ顔で歩きだす。と、向こうから歩いてきた無表情な美女(サビーヌ・モロー、好演)が、すれ違いざまにコートのポケットから拳銃を抜き、彼を撃ち、姿を消す。瀕死の彼の携帯機器には、女がテロ組織の殺し屋であることが記録されるが、駆けつけたIMFの女性諜報員ジェーン(ポーラ・ハットン)に、彼は愛の言葉をつぶやき絶命する……。

 この冒頭には、全編を貫くバード監督の<語り>の、いわばエッセンスがぎゅっと詰まっている。ハイテンションだがこれ見よがしではない、前述の“スマート”なストーリーテリングだ。ただしそれは、「古典的ハリウッド映画」の簡潔な<語り>ではない。『M:I―4』は、ハリウッドのメジャー作品にふさわしく、ある意味「過剰な」映画であり、さまざまな見せ場の連続が、サービス精神豊かに演出される。

 序盤の、トム・クルーズが変装して侵入したクレムリンが、テロ組織によって爆破される場面のスケール感や、ハッカーによって破壊されるデータ、人間の服に貼り付けられる追尾用マイクロチップ、核ミサイルを遠隔操作するコンピューターといったディテールの工夫、あるいはスクリーンを蜂の巣にするかのようにおびただしく発射される銃弾、さらに「9・11」と「3・11」が一体化したような巨大砂嵐のCG映像の恐怖……。

拡大『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

 また、米大統領が“ゴースト・プロトコル”として極秘に発令したIMFの存在抹消というユニークな設定や、スパイ同士の虚々実々の駆け引き、プロの格闘家さながらの殴る・蹴る・絞めるといった過激なファイト。そして最大の見せ場である、ドバイの超高層ビルの最上階から宙吊りになったり、ビルの外壁を全速力で駆け降りたりするトムの荒技スタント、などなど。

 普通だったら、これだけハイテクやCGに頼り、ハードなアクションや奇抜な道具立てを盛りだくさんにすると、 ・・・ログインして読む
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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