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落合博満のベストセラー『采配』はタリラリラ~ンなのだ!

近藤康太郎 朝日新聞西部本社編集委員兼天草支局長

 輝かしい成績を残しながら中日の監督を石もて追われた落合博満の著書『采配』(ダイヤモンド社)が、ベストセラーになっている。わたしはいちおう読書面も担当しているので、ベストセラーには目を光らせていなければならない。まあ、光らせているだけで、読まないんだが(だめじゃないか!)。

 『采配』も普通だったらスルーするところなのだが、落合さんには恩があるので買って読んでみた。で、やはり、この人は天才だと確信したのだった。

監督時代の落合氏と信子夫人=2008年12月、名古屋市中区

 「向上心より野心を抱け」とか「欠点は、直すよりも武器にする」とか「オレ流ではない。すべては堂々たる模倣である」とか。目次からして売れるビジネス書みたいな作り。おそらく落合さんが野球話を語っているのを、やり手の編集者が潤色してビジネスに結びつけ、オヤジマーケットを狙っているのだろう。やりすぎ感があるにはあるが、しかし、落合の野球観は、ライター業にも通じる。普遍的な金言が満載だ。

 「落合さんには恩がある」と書いたが、べつに面識があるわけじゃない。全盛期を過ぎて現役選手を引退したころ、どこかの新聞の小さな広告記事で読んだ1行に、バリバリッと雷に打たれたのだ。

 史上初の3度の三冠王に輝いている落合は、言うまでもなく「天才」だろう。しかし、落合はその広告記事で、おおよそこんな趣旨のことを言っていた。

 ――プロ野球に入ってくるような奴は、みんながとてつもない才能を持っている。でも、才能なんて大したことないんだ。結局は、バットをたくさん振った奴が勝つ。

 え? この人、すごくフツーじゃないか? それこそビジネス書みたいなことを言っちゃうの?

 最初はそう思っていたのだが、

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