鷲尾賢也
2012年01月30日
テレビは多くのアイディアを新聞、雑誌、書籍から得ている。にもかかわらず、あたかも自分たちだけで制作しているという顔をしている。たしかに、お笑い番組や、芸能人のトークなどは、活字メディアとは関係しない。しかし、ドラマ、アニメ、ニュースの他に、最近、大はやりのクイズ(漢字・常識などを含む)や健康・医学を含めた一般教養的な番組のコンテンツはかなり出版物によっている。また、出演者の情報についても本や雑誌から得ているはずである。
いまや顔を見ない日のないほど活躍している池上彰も、単行本がベストセラーになったことがきっかけであろう。ところが、書籍の動向についての番組は極めて少ない。なぜなのであろうか。まさか、視聴者は本を読まないと思っているわけではないだろう。
テレビには激烈な視聴率競争があり、そんなことに時間を使えないというのかもしれない。しかし、BS放送などの多くは、再放送や、輸入した海外制作番組、あるいは昔の映画、韓国ドラマなどで埋めているのが実情ではないか。
「週刊ブックレビュー」の終了は残念であるが、一方、いままで出版関係者や愛書家・本好きがよく見ていたかというとそうともいえない。むしろ不満の方が大きかった。
その第一は書目の選定にある。ゲスト3人が自分の選んだ本を持ち寄るというスタイルだった。結果的に、哲学・歴史など難解・長大なもの、また政治・経済から事件・告発・批判まで、物議を醸すようなものは選ばれない傾向にあった。判断が分かれ、論争になるようなものも避けられていた気がする。だから、どうしても小説・エッセイといった無難なジャンルが多くなる。
つまり、書店の店頭状況が反映されない。本好きは出演者に関心があるのでなく、本そのものについての情報を得たいのである。それが「週刊ブックレビュー」では十分に満たされていなかった。
読者はいつも真剣なアピールを待っている。「おもしろかった」「すごい」「驚いた、感動した、勉強になった」「騙されたと思って、買って読んでみたら」。こういう本気のコメントがあるからこそ、読もうとし、本屋に走るのである。あたりさわりのない出演者のやりとりではしらけてしまう。はっきりした意見が欲しい。本当の意味で実用的でなくてはいけないのだ。だから小皿料理のような細切れメニューの並ぶ構成では満足しない。じっくり、たっぷり本について語ることがいちばん大事な要素なのである。
こんな書評番組ができたらいいなあ、と妄想することがある。例えば対決
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