2012年02月17日
派手な題材と静かな描写──この映画を観ながら感じ続ける奇妙な印象は、このミスマッチによって醸しだされている。そして、それこそがこの映画の最大の魅力にもなっている。
物語は、高校生の少年・ジョシュアが母親を亡くすシーンから始まる。母親の死因はヘロイン中毒だ。救急隊が来るまで、彼はソファで動かなくなった母親の隣で、静かにテレビでクイズ番組を観ている。救急隊が来てからも、立ち上がって応急処置とテレビをぼんやり交互に眺める。そんな彼の表情から、悲しみは見て取れない。無表情としか表現できないように、彼は感情を表に出さない。この時点で、観賞者は彼のこれまでの生い立ちをなんとなしに想像させられる。
孤児となった彼は、祖母のスマーフに引き取られることになる。だが、長男の通称・ポープ(「教皇」の意)をはじめとする伯父の3人は、強盗や麻薬密売など、犯罪で生計を立てているギャングだった。亡くなった母親は、そんな兄弟や親と距離を置いて生活していたのだった。
この一家のなかで祖母のスマーフは、女王蜂のような存在だ。中年にもなる息子たちを溺愛し、彼らの犯罪も見逃している。彼らが逮捕されれば、弁護士を雇って釈放に奔走する。その溺愛の異常さは、挨拶がわりのキスを唇にする異様な光景でわかる。この「アニマル・キングダム=野生の王国」は、犯罪にまみれて生きる息子3人を、老いた女王が見守ることで成立しているのだ。
ジョシュアはこの独特な世界に放り込まれ、
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