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 先日のアカデミー賞の発表で最も驚いたのは、4月7日公開のミシェル・アザナビシウス監督『アーティスト』が、作品賞や監督賞を始めとする主要5部門を受賞したことだ。『アーティスト』より1つ多い11部門にノミネートされていた巨匠マーティン・スコセッシ監督『ヒューゴの不思議な発明』が、技術部門を中心に5部門を取ったのに比べて、圧勝と言えよう。

 『アーティスト』は、セリフのないサイレント映画でそのうえ白黒。そして何より監督も主演の2人もフランス人で、製作費の大半をフランスが負担した、純然たるフランス映画だ。外国映画が主要5部門を受賞した例なんて、英国やオーストラリアなどの英語圏を除くと聞いたことがない。もちろんフランス映画史上初めてだ。

 なんでこんなことが起きたのか。

 その秘密を解明する前に、まず今年のアカデミー賞の全体的傾向を述べておこう。授賞式の前に来日したマーティン・スコセッシ監督は、オスカーを取ると思うかという質問に対して、「受賞する作品は、毎年のハリウッドのムードを反映する」と答えた。ならば今年の「ムード」は、ずばり「映画愛」と「レトロ」なのではないか。

 『アーティスト』は、トーキー映画が訪れて、サイレント映画のスターが消えてゆく話だ。『ヒューゴの不思議な発明』は、映画の草創期に活躍したジョルジュ・メリエスを少年が再発見する物語。

拡大『アーティスト』で主演男優賞をとったジャン・ドゥジャルダンと、共演した犬のアギー=AP

 たぶん誰も指摘していないが、この2つの映画には同じようなシーンがある。

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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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