メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

【ポスト・デジタル革命の才人たち】 ニコラス・ネグロポンテ氏インタビュー 「文字が読めない子どもたちにパソコンで本を読んでほしい」

聞き手=服部桂(朝日新聞社ジャーナリスト学校シニア研究員)

――しかし値段を下げるのは大変だったのではないですか。

 もちろんメーカーの人たちは、何もないところから作ると既製品より高くつくと主張していました。しかし、われわれのパートナーには、台湾の世界的なクアンタ・コンピューター(Quanta Computer)がいました。同社の創業者バリー・ラム氏は、とても熱心な協力者です。OLPCを始めたとき、「100ドルパソコンなど大学教授のたわごと」と悪口を言われましたが、ラム氏が「うちがつくる」と言ったとたんに世間の風向きが変わりました。そして「これは実現しそうだ」という雰囲気になっていったのです。クアンタは当時、世界のラップトップの45%を製造していましたからね。

 ただこれは低価格ではあるがチープなパソコンではなく、実質的に安くても十分に使えるものであることは誤解して欲しくありません。

――どういうソフトが入っているのですか。

 どのパソコンにも、子どもがお絵かきをするように遊びながらプログラミングできるソフト(Squeak:スクイーク、Scratch:スクラッチ、Logo:ロゴ他)が入っています。それ以外のアプリのソフトは、それを採用する国が決めています。ペルーでは電子書籍をたくさん乗せており、ウルグアイではネット接続を重視し、エチオピアでスクイークを強化しています。

――どのように配っているのですか。

 基本は学校を通して配布し、子どもたちの個人所有にして、家に持ち帰れるようにしています。学校で使う場合が多いのですが、ウルグアイでは通信環境が整っているので、家で使っている子どもが大半です。パソコンは返してもらうことは考えてはいません。ラップトップについては政府の資金で90%で買い上げてもらい、いままで250万台ほど配っています。

 例えば日本の援助金がアフガニスタンに流れていますが、それは結局子どもたちの手には届いていません。お金を渡しただけでは、どこかで消えてしまう。だがパソコンを渡せば、きちんと形として残ります。アフガニスタンには1万台のラップトップを送りましたが、タリバンはそれに手をつけないし、それを持った子どもたちを決して傷つけないんです。それはパソコンにはコーランが入っているからなんですよ。

――日本や先進国では売るということはしないのですか。

 このパソコンはあくまでも途上国向けです。そのため欧米、日本などの先進国には出荷していません。しかし今年の1月に、次のタブレット・パソコンを発表しました。このタブレットは全く違う戦略をとっており、まとまった数で発注してくれるのなら、誰にでも提供しようと思っています。価格はオプションによって異なりますが、基本的には100ドルを切るものになるでしょう。

――どういうマシンですか。

 ともかく小さくて軽いんです。ARM社のチップを使っています。そして小さなデジタル・カメラが付いています。そして防水加工してあります。カバーが太陽電池パネルになっています。そして、わざとねじを露出させ、子どもが中を開くこともできるようになっていて、修理ができるようにしています。手で発電して電力を供給できるように、外付けの装置も用意してあります。カメラが付いていることはとても重要です。子どもが自分でいろんな写真を撮ってくれるし、これをテレビ電話に使えるからです。

――価格はいくらですか。

 ラップトップの今の価格は185ドルですが、タブレットは100ドル以下になるはずです。確かに最初の目標は100ドルでしたね。6年前のドル相場だったら、この目標は達成できていたはずですが、われわれがコストを下げるとなぜかドルも下がってしまい、結果的にまだ目標が達成できない状況なんです(笑)。

――タブレットはラップトップとは大きく違うのですか。

 考え方はラップトップと同じです。つまり子ども中心のボトムアップのデザインです。ウィンドウズ以外の基本ソフトなら、リナックス、アンドロイド、クロームと何でも載せられます。グリーンが基本の色です。

 インドはすでに、タブレットを採用してくれると発表しました。タイも検討中ですし、ヨーロッパでもいくつかの国から話が来ています。国によって、ビジネス的な関心によって違います。

 先週(編集部注:取材は1月17日)にはタブレットについての記事が300本も出て、いずれもが極めて好意的な内容でした。あとはコストを下げるという経済の問題を解決するだけですね。ともかく、OLPCの考えがやっと広く受け入れられたことに満足しています。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。