2012年04月06日
教科書のようなぶっきらぼうなタイトル。しかも、版元が文庫合戦からやや引いている印象のある中公文庫。「東大・早稲田・慶應で文庫ランキング1位」という帯の惹句にもかかわらず、にわかには信じられなかったからである。
軽薄短小(もう古いかな)ではなく、重厚長大が中公文庫のイメージである。トロワイヤをはじめとする伝記もの、政治家や外交官などの回想録、『日本の歴史』『世界の歴史』などのシリーズもの、中国やシルクロード関係、民俗学や好事家の著書も数多く収録されている。価格も安くない。近年は書き下ろし小説などもラインアップされているようだが、かつての印象は拭いがたく、だからこそ古書での人気に比較的高いものがある。
そういうなかでの『世界史』である。上下巻とも400ページをこえる。しかも1ページが42字×18行。版面いっぱいにぎっしり詰まっている。図版も小さく見にくい。行間がスカスカに空いている現在の文庫とは雲泥の差がある。読みやすいとはお世辞にもいえない。
私のような年齢のものには、読み終えるのにかなりの時間と労力がかかった。税込みで一冊1400円。2冊併せると2800円。それなりの値段である。それが30万部をこえるなどとは、信用できないのも当然であろう。
ではページを繰るのが惜しいほど面白いのであろうか。そんなことはない。私の印象かもしれないが、しっかり書き込まれたいわば目配りの利いた教養の世界史である。いまの研究レベルはこういうところにあるのかという納得感はあったが、「眼からうろこ」といった内容のものではない。
人類の発生から、ソ連崩壊・人口爆発・科学・技術の加速度的展開、地球規模のグローバリズムなど、ごくごく最近まで、全30章をゆったりと描ききった大著で、私のようにあわてて読んではいけない本である。その意味ではとても感心した。
感心したことがもう一つある。
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