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木嶋佳苗は嫌いな人ではないが、どうにもモヤモヤが……

青木るえか エッセイスト

 死刑ですかカナエ!

 こうやって判決が出てみると、つくづく自分は「死刑に反対」である。

 カナエの話の前にまず死刑の話をすると、政治的とか倫理的とかそういう問題の前にまず、その“気持ち悪さ”が「死刑を受け付けない」理由です。

 ヒトがヒトを殺すなどということは「はずみ」であってほしい。

そんな軽いことでいいのか、と言われそうだが、しかし「周到な準備をしての殺人」は罪としても重い。計画性の有無というのは、殺人の場合、厳しく問われるところだ。

 周到な準備のもとに行われる殺人の最たるものが死刑だろう。

 数年前に公開された刑場の写真。あれは衝撃だった。やけにきれいに整えられてるところが……。床や壁紙の素材の感じが、皇居正殿松の間というか、そんな感じの、よそよそしいまでの整えられかた。絞首刑で床が抜ける、そこの部分が四角く切り取られてることがわかるが、まわりには絨毯が敷き詰められてるようで(実際はわかりません)、「この四角の上にふだんは卓球台を置いてるのか」とか口走った。あまりに気味が悪かったのでそんなことでも言わないことには元に戻れなかったのです。打ちっ放しのコンクリートで正体不明のシミでもついてる部屋のほうが、まだ「ここは人を殺すところだ」と納得もできたが……。

 それと同じような意味合いで、最近の豪華というか近代的な火葬場もイヤでイヤでしょうがない。昔の、墓地の横にあるゴミ焼却場みたいな火葬場のほうがマシだ。死を、というか死体を小ぎれいなモノや儀式で糊塗しないでほしい。

 それぐらい、死体が嫌いなので(好きな人もいないだろうが)、殺人者の気持ちがさっぱりわからないし殺人者を憎むが、罪の報いに死を賜るってのがどうしても納得できない。これ以上死体を増やすなと思う。まあ、これは、個人的な嗜好の問題だ。

 あとは、警察と検察の無誤謬を到底信じられないというのもある。亀井静香はどうかと思うことも多い政治家だが、死刑廃止論という一点においては共感する。政治家のやることであるから、何か死刑廃止利権みたいなもんがあるのか考えたけど、あんまりなさそうだ。何よりも亀井さんは「冤罪があったら取り返しがつかぬ」ということを元警察官僚として言っているのが信用できる。冤罪はありませんとかいうよりもずっと日本はちゃんとした国だという気がする。

 とっぴなことを言うようだけど、「冤罪なんかありません!」というタテマエと、刑場のあの皇居正殿松の間みたいなたたずまいというのは同じ種類のもんだと、私には感じられてしまうのだ。どちらもコワイし、気味が悪い。

 そしてカナエさんだ。

 死刑判決を受けてしまった。

 最初はあんまり興味がなかった。だって、体型と、好きな食べ物(バターが好きだそうだ。私も好きだ。バターを切ってそのまま食べるのも美味しいと思う。カナエさんもきっとそうだ)は共通しているが、男の人とたくさんつき合ってたという時点で、私とは違う星の人である。

拡大3月の公判での木嶋佳苗被告=さいたま地裁(絵と構成・仲澤瑞希)

 好きな人と嫌いな人に対してはしつこいが、この人は自分とはちがうなー、という人にはあまり構わない。

 嫌いな人ではない。

 男の人とのつきあい方も力一杯というか、直球というか、椎名林檎とか戸川純を頂点とする「私はちょっと違うのよフフフ」という“フリ”だけで男をたぶらかすイヤな女ではなく、料理とかセックスのワザでもって男をおびきよせ、金を吸い上げる。まったくやり方として「何も申し上げることはございません。正しい」という方法だ。

 嫌いな人じゃないが、

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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