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梅ちゃん先生にキビシイ運命が襲うことを願う

青木るえか エッセイスト

 『カーネーション』とくらべて『梅ちゃん先生』はどうなのか。視聴率とか評判とか。『カーネーション』はいろいろと思うところがありながらもつい見てしまって、とくに夏木マリになって評判が悪くなってからは尾野真千子時代よりも見入ってしまった。オノマチ時代にイチャモンつけたくてそっちを見た!ってわけでもないのに(そもそも夏木マリ編はつまんなかった)。

拡大ヒロインの下村梅子(堀北真希)

 で、『梅ちゃん先生』が始まりまして、これが……。

 こんなのわたしゃ見たくないよ!

 でもなんか見ちゃってるよ!

 オノマチ時代の『カーネーション』よりもきちんと見ちゃってるよ!

 こういう口の利き方で、あえてほめている、とか取られると遺憾です。『梅ちゃん先生』って、相当ダメと思うんです。

 初回見た時はいいんじゃないか、と思ったんですよ。思った自分に今はバカと叫びたい気持ちでいっぱいですが。

 最初に私が『梅ちゃん先生』に食いついたポイントは、

 「堀北真希。『篤姫』で和宮やったのを見て、その稀代の和宮役者ぶり(皇妹というもののわがままさ、ぼんやりさ、暗さ、品の良さなどを驚くほど表現してた。単に堀北さん本人がそういう人だっただけかもしれないが)に驚き、こういう持ち味の人は民放のドラマじゃイマイチ良さを出し切れないだろうなあと思っていたら、NHKの朝ドラに! ぜったいいい演技してくれる! と思った」

 「梅子のお父さん役の役者が良い」

 「倍賞美津子演じる梅子の祖母の、あの“すべて他人事”みたいな風情が良い」

 であったのだが……。

 2回目にもうダメだとなったのが、梅子のお父さんである。

 大学の医学部の教授で頭がハゲてて、見た目は雰囲気出てるよなと思ったのに、いったん台詞喋りはじめるといきなりシロートっぽい。頭がカタくてマジメで不器用だが実はちゃんとあったかいところもある、というわかりやすいキャラ設定で、わかりやすいだけに案外そういうのは演じるのが難しいんだろうか、と思わせる、このお父さんの芝居のダメっぷり。

 ただの、あんまり他人に興味のない横暴なだけのお父さんなんで、見ているとツライ気分になるのだ。行きずりのおっさんみたい。行きずりのおっさんとしてはなかなかリアルな造形なんだけど……そういうのを目指しているとは思えないんだよなあ。

 戦災孤児の子供の食中毒を治療してやるっていう場面があって、そんな場面なんていかにも「実はこの謹厳なお父さんのやさしさが見える」ようにするところだと思うけど、そういう感じじゃなくて、事務的な治療っぽく流れてしまった。ここで、あくまで人間味のない描写に徹して、あとのほうでどんでん返しがあるのだろうか。たぶんないだろう。

 倍賞美津子はいまだに謎だ。このばあさんが今後どういう行動で話にからんでくるのか。あの、すべて他人事、のようなばあさんが、豹変する日が来るのか。今のところ、「ひたすら他人に無関心なばあさん」でしかない。

 堀北真希は、和宮とはまるっきり違う役柄で、これが今どきないような「ドジで可愛い梅子」で、いろいろ失敗するんだけど、結局は何をやっても可愛いから許される、という存在。あの、和宮の愚鈍な暗さを期待した私がバカだった。もっと暗い役をやらせろ! 今後、暗くなるだろうか。医者だし、死と隣り合わせ。解剖とかあるし、暗くなる余地は充分あるが……どう考えてもムリ。

 しかし、こんなことはどうでもいいことかもしれない。

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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